幼馴染と共に金メダルの瞬間を共有、村瀬心椛選手の快挙に岐阜で歓喜
ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのスノーボード女子ビッグエア決勝で、村瀬心椛選手(21)=TOKIOインカラミ=が見事な金メダルを獲得した。岐阜市で開催されたパブリックビューイングでは、最前列に村瀬選手の幼なじみである浅井花鈴さん(21)と武藤蒼奈さん(21)の姿があった。二人は大舞台に挑む親友とともに緊張し、祈り、そして歓喜の瞬間を分かち合った。
「信じられない夢のような瞬間」幼馴染の目に映った金メダリスト
日本時間の10日未明、表彰台の中央に立った村瀬選手の姿に、浅井さんは「信じられない。まだ夢みたい」と目を細めた。4年前の北京冬季五輪から二つ順位を上げた勇姿に、隣の武藤さんも「めちゃくちゃかっこいい」と笑顔を見せた。二人は岐阜市の大学生で、村瀬選手と同じ幼稚園に通い、浅井さんは中学校、武藤さんは小学校と中学校も同じ校舎で過ごした親友である。
村瀬選手を「こも」という愛称で呼ぶ二人は、高校では別々になったものの、卒業直後の2023年3月には岐阜県郡上市で一緒にスノーボードを楽しんだ。スノボの経験がほとんどなかった浅井さんは「北京のメダリストと滑れるなんて、すごい経験だった」と当時を振り返る。
緊張と祈り、そして爆発的な歓喜
今大会前には交流サイト(SNS)で「頑張れ」とメッセージを送り、「心椛」と書いた自作のうちわを用意して臨んだという二人。決勝では2回の演技を終えて3位となり、浅井さんは目を潤ませた。「最後は難しい技に挑戦するんだろうなと思って」と、北京と同じ銅メダルで終わりたくないという親友の覚悟を感じ取っての涙だった。
3回目の演技で着地を決めた瞬間、二人は喜びを爆発させた。武藤さんは「一緒に緊張した。技を決めて、うれしい気持ちと安堵の気持ちが同時に来た」と語る。中学生の頃に大けがを負いながらも努力を続けてきた村瀬選手の姿を見続けてきたからこその感慨だ。浅井さんも「大けがをしたら普通は跳ぶのが怖くなってしまう。それでも上へ上へと頑張れるのは本当にすごい」と称賛した。
帰国後はケーキでお祝い、さらなる金メダルへ期待
村瀬選手が帰国したら、一緒に「ケーキでお祝い」をする計画だという。もちろん、16日から始まるスロープスタイルの分も祝いたいと、「もう一つ金メダルを!」と祈りを込める。その願いはきっと海を越えて選手に届くことだろう。
雪が少ない地域でも「地の利」中部勢の強さの秘密
金メダルに輝いた村瀬選手は岐阜市出身で、男子では名古屋市出身の木俣椋真選手(23)が銀メダルを獲得した。今大会は他に2人の愛知出身選手が代表に名を連ねており、雪が少ない地域からなぜこれほど多くの強豪選手が生まれるのか、その理由を探る。
屋内練習施設の存在が選手育成の礎に
日本代表の稲村樹コーチ(30)がまず挙げるのは、岐阜県羽島市にあった屋内スキー場「スノーヴァ羽島」の存在だ。長野冬季五輪の1998年に開業したこの施設は通年練習が可能で、人工雪を固めて造った約5~6メートルのジャンプ台や障害物があり、村瀬選手らも小学校低学年からここで技を磨いた。
愛知県からもアクセスしやすかったスノーヴァ羽島は経営難で2021年に閉館したが、代わるように拠点となったのがジャンプの練習に特化した全天候型エアマット施設である。着地点にマットが敷かれた施設は愛知県の春日井市と新城市にあり、プロスノーボーダーの芳家裕里さん(29)=愛知県一宮市=は「そこで育った選手が世界に躍進した」と語る。
地理的利点と雪質の特性も強みに
稲村コーチはさらに「車文化が根付き、愛知からでも1時間半で行けるスキー場がある」と地の利を指摘する。雪質についても、北海道など軟らかい地域に比べると「暖かい分、解けて氷になって固まりやすく、ジャンプ台などがあるパークを維持しやすい」と利点を挙げた。
エアマットを使った練習は日本が先駆けで、近年は各地に施設が整備されている。その中でも愛知、岐阜から有力選手が育ち、村瀬選手が五輪の頂点に立った。芳家さんは「これからも一緒に練習する子どもたちの憧れでいてほしい」と、スノボ強国の系譜が続くことを期待している。