スモーキングルーム第139回:金ボタンの家族の真実とホテルの人間模様
新しい総支配人は太陽のように堂々としており、彼が現れると束の間だけ光が射す。しかし、彼は針金とは異なり、四六時中ホテルにいるわけではなく、新しいオーナーから他の仕事も任されているようだ。蝙蝠は再び副支配人の座に収まり、総支配人に媚びへつらう姿が目立つ。
森での会話と果実摘み
ジャム瓶は休憩室にいる金ボタンを捕まえては「あんた、ついてきな!」と森へ連れ出し、腰が痛いからと苔桃や木苺、黒すぐりを摘ませる。「最近、息苦しいったらないよ! まったく、ろくでもない、妙な空気だよ。針金がいてくれたら、みんなあいつの悪口で意気投合するのにさ。あんた、若いんだからなんとかしな!」とぶつくさ言う。金ボタンは「無茶言うなよ」と口を尖らせながらも、ジャム瓶の代わりに果実を摘み、襟巻きにも分け与える。指先は果実の汁で染まるが、その時間は確かに肩が軽くなるのだった。
煙との交流と童話のような光景
時々、煙も森にやってくる。襟巻きが跳ねるだけで金切り声をあげるジャム瓶との相性は最悪だが、襟巻きは煙には懐いている。銀色の髪を撫でつけた黒いタキシード姿の煙が腕に襟巻きをとまらせて森に佇んでいると、まるで童話の世界にまぎれ込んだようだった。
金ボタンの内省と家族への思い
「俺がぬるかったのかな」と金ボタンは赤い実を口に放り込む。酸っぱい味が広がる。「ホテルの奴らはみんな家族みたいなもんだと思っていた」と呟く。すると、切り株に腰掛けたジャム瓶が「あんたはまだ甘ちゃんだよ!」と叫ぶ。煙が「僕は家族を知らないけど、君は本当の家族を知っているだろう」と言うと、金ボタンは街の外れにある家に帰ったことを思い出す。
実家訪問と衝撃的な光景
スモーキングルームで隣国の将校から静かな脅しを受け、気になって急ぎ帰った金ボタン。石畳の路地を曲がると、赤や黒のペンキで落書きされた家が目に入る。驚いて駆け寄ると、中は男たちでいっぱいで、家族の姿はなかった。きょうだいたちがあちこちに奉公に出されたことは知っていたが、肺病持ちの母親と一番上の姉がいたはずだ。男たちの中に父親の姿を見つけ、「おい!」と肩を摑む。あっという間に周りの男たちに引き剝がされ、道に投げ飛ばされるすんでのところで、「息子だ」と父親が止めに入る。
家族の消息と「赤い矢」の党員
家は「赤い矢」の党員の溜まり場になっていた。「母さんは」と金ボタンは父親を睨みつける。もう目線は同じくらいだった。父親は無精髭だらけの顔で、母親は湖水地方の実家で療養させていると言い、一番上の姉もそこの若者と結婚したと早口で伝える。金ボタンは複雑な思いを抱えながら、ホテルでの日常と家族の現実の狭間で揺れる。