見えず話せない少女の心の動きを身体表現で描くミュージカル
2022年10月に初演されたミュージカル「SERI(セリ)~ひとつのいのち2026」が、2026年2月19日から東京都内で再演される。この作品は、在米日本人女性の実体験に基づく手記を原作としており、視覚と言語を持たない重複障害児・千璃(せり)の誕生から18歳までの成長を情感豊かに描き出す。
身体表現で感情を伝える山口乃々華さんの演技
舞台の中心となるのは、話せない千璃役を演じる山口乃々華さんである。山口さんは言葉を使わず、繊細な身体表現だけで千璃の内面の感情を観客に伝える。目も鼻もなく生まれた千璃の「生きる意味」を、動きや姿勢を通じて表現するその演技は、観る者の心を深く揺さぶる。
物語はニューヨークを舞台に展開する。元客室乗務員の母・美香と会計士の父・丈晴にとって、千璃の誕生は初めての出産体験であった。しかし、産科医が「写真はやめろ!」と遮る中、生まれた娘には眼球がなく、額から鼻へ骨が斜めに走るなど顔がゆがんでいた。この衝撃的な出産シーンから、家族の苦悩と受け入れの過程が描かれる。
美しい旋律に乗せて紡がれる命の物語
作品では、「あきらめない 無理して笑ったりしない SERI SERI 強がったり 我慢したりもしない SERI SERI 伝えられない でも信じることをやめない」といった歌詞が美しい旋律に乗って響き渡る。これらの歌は、千璃の無言の叫びや、家族の心情を代弁する役割を果たしている。
大人たちが自身の弱さや先入観に気づき、命の本質を見つめ直す姿が、舞台全体を通じて丁寧に紡がれていく。千璃の存在が周囲の人々を変え、成長させる力を持つことを、作品は静かにしかし力強く伝えている。
シニア生活文化研究所代表理事・小谷みどり氏のコメント
シニア生活文化研究所代表理事の小谷みどり氏はこの作品について、「喜怒哀楽を表したり、ノーと言ったりできないことの意味を考えさせられた」と述べている。さらに氏は、「日常で風の音や街の喧騒を意識しているかどうか、そんな気づきを与えてくれた」と、作品がもたらす内省の機会を評価している。
ミュージカル「SERI」は、単なる障害をテーマにした作品ではなく、「生きるとは何か」という普遍的な問いを観客に投げかける。見ることも話すこともできない少女の命の輝きを、舞台芸術の力で可視化したこの作品は、2026年の上演でも多くの感動を呼ぶことが期待されている。