タックルをタッチに置き換えた新スポーツ「T1ラグビー」が都内で体験会を開催
強い身体接触を伴わない新たなラグビー競技「T1(ティーワン)ラグビー」の体験会が、東京都渋谷区の都立青山高校グラウンドで開催されました。国際競技連盟「ワールドラグビー」が2023年に開発したこのスポーツは、女性やシニア世代も安心して参加できることを特徴としており、公募で集まった10代から70代までの男女47人が参加しました。
安全性を重視したルール設計
T1ラグビーは1チーム7人制の「ノンコンタクトラグビー」の一種です。従来のラグビーと同様にキックやスクラム、ラインアウトなどの要素を取り入れつつも、安全性を最優先に設計されています。スクラムでは攻守3人ずつが肩を軽く触れ合う程度に留め、ラインアウトでは選手を持ち上げるサポートリフトを禁止するなど、身体への負担を軽減する配慮がなされています。
これまでに普及していたノンコンタクトラグビーとしては、腰に付けたタグを取る「タグラグビー」(1チーム5人)や、1960年代にオーストラリアで始まった「タッチラグビー」(1チーム6人)などがありましたが、これらの競技ではキックプレーがありません。T1ラグビーは15人制や7人制ラグビーに近い要素を保ちながら、より幅広い層が参加できるように進化した形態と言えます。
初心者からベテランまで多様な参加者
体験会ではまず、日本ラグビーフットボール協会(JRFU)の講師がルール説明を行いました。「攻撃側が守備側から7回タッチされたら攻守交代」「6回まではタッチされた地点から味方にパスしてプレーを再開」「ボールを前に投げたり落とすのは反則」といった基本的なルールが丁寧に解説されました。
参加者の中にはチームスポーツ自体が初めてという方も多く、横浜市泉区から参加した山下尚子さんは「ラグビーというと激しいぶつかり合いのイメージがあったが、T1は怖くない」と笑顔で語りました。一方で、高校時代からラグビーを続けている墨田区の国広百合人さん(73)は「強い接触がないのでシニアでも十分楽しめる」と、安全性の高さを評価しました。
日本代表選手も初体験
15人制女子日本代表のンドカ・ジェニファさん(25)もJRFUの呼びかけで初めてT1ラグビーを体験しました。「性別や年齢を問わず、ラグビーが初めてという人も一緒にプレーできるのが素晴らしい」と感想を述べ、「1人で突破するのは難しいから、味方同士の声かけやコミュニケーションが重要だと改めて実感した」と競技の特性を分析しました。
JRFU事業遂行責任者(普及育成担当)の安井直史さん(48)は「これからラグビーを始める若い世代にはラグビーを理解する入り口に、仕事などでラグビーから離れた人には戻る一歩になる」とT1ラグビーの意義を強調し、「体験者をさらに増やしていきたい」と今後の普及に意欲を見せました。
競技名称に込められた思い
T1の「T」には「Touch(タッチ)」「Together(共に)」「Try(トライ)」という3つの意味が込められています。また「1」には「ラグビーを始める最初の一歩」「だれでも1番になれる」といった多様な解釈が可能で、参加者が自由に捉えられるようになっています。この名称自体が、競技の包括性と多様性を象徴していると言えるでしょう。
体験会では参加者たちが3チームに分かれ、実戦形式で交流試合を楽しみました。審判の「タッチあり」「攻守交代です」という声が飛び交う中、年齢も性別も経験も異なる人々が同じグラウンドでボールを追いかけ、笑顔で交流する光景が見られました。T1ラグビーは単なるスポーツ競技としてだけでなく、多様な人々をつなぐコミュニケーションツールとしての可能性も秘めているようです。