経済安保で有識者提言 企業の海外展開に国がリスク許容を拡大すべきと主張
経済安保提言 企業海外展開に国がリスク許容拡大を求める

経済安全保障で有識者会議が提言 企業の海外展開支援強化を求める

政府の経済安全保障に関する有識者会議は10日、小野田紀美経済安全保障担当大臣に対して提言を提出しました。この提言では、経済安全保障に資する日本企業の海外展開に対して、国が損失リスクの許容範囲を積極的に広げ、支援を拡大していくことの検討を強く求めています。

グローバルサウスでのインフラ整備を重視

提言の柱の一つとして、戦略的に重要な位置にあるグローバルサウス(新興国・途上国)における港湾整備などを念頭に、輸送網の強化や重要な技術の海外展開につながる事業を行う日本企業への支援が不可欠だと指摘しました。現在の政府系金融機関による出融資では、採算性に不確実性がある事業は十分な支援を受けられない現状を問題視しています。

具体的には、国際協力銀行(JBIC)の活用を通じて、通常の出資よりも後に利益が分配される「劣後出資」などの手法を導入し、リスクを取ることが可能となる新たな枠組みを別途検討すべきだと主張しました。これは、高市早苗首相がかねてから提唱する、経済安全保障に資する分野に官民が連携して投資を進める「危機管理投資」の具体化を求める形となっています。

海底ケーブルや人工衛星も支援対象に

さらに、海底ケーブルの敷設や人工衛星の打ち上げを国の支援対象に加えることや、サイバー攻撃を防ぐため設備の導入時に国の事前審査が必要となる「基幹インフラ」に医療分野を追加すること、国家安全保障局を司令塔とした経済安全保障のシンクタンクを構築することなどを提言しました。

一方で、民間企業が保有するゲノムデータなど個人に関する機微なデータについて、既存の法制では十分に保護されない恐れがあるとして、必要な措置の検討も求めました。ただし、「データの利活用や経済活動を必要以上に制限しないよう、措置の対象範囲には細心の注意が必要」と指摘。政府はさらなる議論が必要として、今回の法改正には盛り込まない方針を示しています。

海底ケーブル敷設船の確保が急務

背景には、通信インフラを支える海底ケーブルを敷設する専用船が世界中で奪い合いになっている現状があります。動画配信サービスや生成AIの普及により通信量が爆発的に増加しているためです。新たな船を建造するには巨額の費用がかかることから、政府は経済安全保障推進法を改正し、敷設船の確保を支援対象とする方針を固めています。

海底ケーブル市場で世界シェア2割超を握るNECの担当者は、「現在の通信需要に応えるには、1本で衛星通信の100~1千倍の容量がある海底ケーブル以外に選択肢はない。しかし、船が確保できなければ予定していた工事ができなくなる恐れがある」と危機感を表明しています。NECは敷設事業も手がけますが、自前の船を持たないため、海外の船会社からチャーターしている状況です。

政府はこの提言を踏まえ、18日召集予定の特別国会に経済安全保障推進法の改正法案を提出する見通しです。2022年に成立した同法は、施行後3年をめどに必要に応じて見直すことが定められており、今回の改正がその一環となります。