JR宇都宮線の停電事故、原因は「人為的ミス」と判明 JR東日本社長が経営の根幹に関わると謝罪
約19万人に影響を及ぼしたJR宇都宮線の停電事故について、JR東日本は2026年2月10日、原因が必要なトロリ線の交換作業を行っていない人為的ミスとみられると発表しました。喜勢陽一社長は同日、記者会見を開き、1月中旬から首都圏で続く輸送トラブルについて、「経営の根幹に関わる事態として重く受け止める」と謝罪しました。
トロリ線の摩耗が極限状態に 検査データの誤判断が原因か
宇都宮線は2月8日深夜、茨城県古河駅付近で下り線の電車に電気を送り込むトロリ線が断線し、10日夕方まで運休が続きました。JR東日本によると、トロリ線の太さは新品で直径15.3ミリであり、8.7ミリを下回ると交換対象となります。限界値の7.7ミリになる前に交換が必要とされますが、断線したトロリ線は4.1ミリにまで摩耗していたことが明らかになりました。
急激な摩耗は考えられず、限界値を下回った状態で電車が走り続けていたとみられています。トロリ線は3カ月に1度ずつレーザー光線を用いたモニタリング検査を受けており、データは正確に計測されていました。しかし、社員がデータから摩耗状態を割り出す際にミスがあった可能性が高く、JR東日本は詳しい経緯を調査中です。
首都圏で相次ぐ電気トラブル 国土交通省も指示を発出
首都圏のJR線では、1月16日以降、山手線や京浜東北線、常磐線で電気トラブルが相次いで発生しています。山手線や京浜東北線の停電は作業ミスが原因とされており、連続する問題が浮き彫りになりました。今月3日には国土交通省から原因究明と再発防止策の検討を指示されており、事態は深刻化しています。
再発防止策として修繕費増額と技術系採用拡大を発表
喜勢社長は記者会見で、チェック体制の見直しや点検精度の向上など6項目の再発防止策を示しました。特に注目されるのは、修繕費の増額と技術系社員の採用拡大です。
修繕費については、コロナ禍の経費節減で2020年度からの3年間で計約800億円削減していましたが、喜勢社長は「安全レベルは保っていたが、将来のリスクではウィークポイントとなった」と説明。2026年度末までに交換や修繕を進め、減額の影響をすべて取り戻すとしました。
さらに、技術系社員の採用を2027年度から150人増やすなどして現場の技術力を向上させる方針を明らかにしました。これにより、点検や保守業務の質的向上を図り、同様の事故の再発を防ぐとしています。
経営陣の責任と今後の課題
一連の停電事故は、単なる技術的問題ではなく、経営管理の在り方そのものに疑問を投げかける事態となりました。喜勢社長は謝罪の中で、経営の根幹に関わるとの認識を示し、再発防止に全力を挙げる姿勢を強調しました。しかし、利用者からの信頼回復には、具体的な対策の実行と透明性のある情報開示が不可欠です。
JR東日本は今後、詳細な調査結果を公表するとともに、再発防止策の進捗状況を定期的に報告する予定です。首都圏の鉄網の安定性を確保するためにも、早期の対策実施が求められています。