風力発電の廃止ラッシュ、10年で420基以上 耐用年数とFIT期限重なり収益悪化
風力発電廃止ラッシュ、10年で420基以上 収益悪化で

風力発電施設の廃止が急増、10年間で420基以上に

全国各地の風力発電施設(風車)が、過去10年間で420基以上も廃止されていることが明らかになりました。特に2020年度からの5年間では、約8割に当たる335基が集中して撤去されています。これは、2000年代に再生可能エネルギーへの関心が高まり建設が相次いだ風車が、20年間の耐用年数と国の固定価格買い取り制度(FIT)の適用期限を同時に迎えているためです。自治体による多額の初期投資や撤去費用を巡り、疑問の声も上がっています。

鳥取県大山町の事例:シンボルから撤去へ

中国地方最高峰・大山の麓に立っていた高さ約120メートルの風車1基が、昨年10月に撤去されました。この風車は、鳥取県大山町が「環境保全のシンボルにしたい」と2005年に約4億4000万円を投じて建設したものです。出力1500キロワットで、毎年450世帯分の電力を売却し、2024年度には約4000万円の収入を得ていました。

しかし、昨年5月でFITの適用期間が終了し、同年6月以降は売電額が半減することが見込まれました。さらに、施設の耐用年数も迫り、稼働を続けるためには3500万円を超える修繕費が必要となったため、廃止を決断しました。撤去費は約1億680万円で、町はそのうち4795万円を負担。残りは土地を購入した業者が支払いました。町は「シンボルとしての目的を果たせた」としていますが、地元町議の一人は「当初から小型の風車を導入していれば、高額の経費をかけずに存続できたのでは」と疑問を口にしています。

全国的な傾向:廃止が加速する背景

日本風力発電協会などによると、各地の風車は、2024年度までの10年間で425基が姿を消しました。2021年度には114基、その後も年間46~77基が廃止され、特にこの5年間だけで計335基に上ります。廃止の背景には、FIT期限切れによる売電収入の減少と、老朽化に伴う安全面の課題が重なっています。

経済産業省の調査では、2023年度までの5年間に、保守の不備や設備不良などが原因の風力発電関連事故が約200件発生しています。昨年5月には、秋田市で民間事業者が運営する風車の羽根が折れて落下し、近くにいた高齢男性が死亡する事故も起きました。

他の自治体の事例:収支悪化で撤去決断

北海道せたな町は2004年、国内初の洋上風車2基を約7億円で建設しました。年間約5000万円を売電していましたが、故障などで2023年と2024年に相次ぎ停止。修繕してもFITの期限切れで売電額が2000万円以上減ることから存続を断念し、約3億5000万円で解体・撤去することになりました。

「日本三大悪風」と呼ばれる強風が吹く山形県庄内町も、2002年に新設した風車1基を2024年度までに約1億5000万円かけて撤去しました。町は「存続すれば収支赤字に陥っていた」と説明しています。

歴史的経緯と今後の課題

風車は、地球環境保護への関心の高まりで建設が進みました。1997年の京都議定書採択後、2000年代に入っても日本の温室効果ガス排出量は増加傾向にあり、対策として太陽光に続く自然エネルギーとして風力が注目されました。2011年の東京電力福島第一原発事故を受け、翌2012年に国が導入したのがFITです。

経済産業省などの試算では、標準的な規模の陸上風車の年間売電収入は数千万円単位とされ、日本風力発電協会などによると、2015~2024年度に計約1200基が新設されました。一方で、2000年代に建設された風車は近年相次いで耐用年数を迎えています。FITの期限とも重なり、変動価格に切り替えると売電収入が減ることもあって、廃止を決める設置者が目立っています。

経済産業省は、廃止後に新施設を導入した際や、施設の一部を再活用する場合、発電量に応じた補助金を支出するなど、再生可能エネルギーの普及を後押しする方針を維持しています。

専門家の見解:将来を見据えた運用が必要

丸山康司・名古屋大学教授(環境社会学)は「風力発電は再生可能エネルギーとして重要で、保全整備が行き届いていれば長期間の稼働も可能です。しかし、資金を担保するなど将来を見据えた運用が必要になります。自治体は廃止に至った経過を検証して明示すべきです」と指摘しています。

固定価格買い取り制度(FIT)とは:風力や太陽光、水力、地熱などの再生可能エネルギーによる電力を政府が決めた価格で買い取るよう電力会社に義務づけた制度です。適用期間は施設導入から20年間で、その期間を過ぎると変動価格制への移行もできますが、価格が大幅に下がることが多いのが実情です。