東京都清瀬市の市長選で争点となった市立図書館の存続問題。原田博美氏が当選してから4月29日で1カ月が経過したが、公約に掲げた旧中央図書館の再開は就任早々に断念せざるを得なくなった。その背景には、事前の情報不足や公約づくりの甘さがあるとみられる。
就任直後の視察で判明した厳しい現実
原田氏は4月3日に初登庁し、その午後には早速旧中央図書館内部を視察した。そこで目にしたのは、コンクリートの躯体だけが残り、まるで廃虚のような空間だった。原田氏は「ここまで荒廃が進むとは。あとは崩すだけという状態ではないか」と驚きを隠せなかった。
市長選では旧中央図書館の再開を公約に掲げており、解体工事は4月1日から中断されていた。しかし、視察後には再開が極めて困難であることが明らかになった。
市幹部から示された法的制約
原田氏は3日午前、市長室に市幹部を集め、「図書館を解体せずに再開した場合にどんな懸念があるのか」と質問。返ってきたのは、図書館が立地する中央公園内に建設可能な施設面積を約80平方メートル超過するという回答だった。公園内には図書館解体を前提とした複合施設が既に開業しており、規制を超える改修は困難だった。
原田氏はこれまで市議会で図書館再編が議論されてきたが、この面積超過の問題は初めて聞く内容だったという。
専門家の指摘と費用の問題
視察中、1級建築士の資格を持つ市職員は、規制をクリアするためには「構造計算からやり直すことになり、新築と同じレベルの作業が必要」と説明。資材高騰により工事費が膨らむ可能性も指摘された。さらに、工事中断による人件費や重機リース代などで1日約100万円の費用が発生していることも追い打ちをかけた。
原田氏は変わり果てた図書館の中で天を仰ぎ、「図書館再開の要望は根強いが、躯体を生かした再生は困難だ。議会の理解を得るのも難しい」と述べた。
公約づくりのあり方が問われる
今回の事態を受け、原田氏の公約づくりに疑問の声が上がっている。市長選では図書館存続を訴えて当選したものの、就任直後に断念せざるを得なかったからだ。支援者からは「原田氏に落ち度がある」「早期に情報があれば違った対応ができた」との声も聞かれる。
清瀬市の図書館は利用率低迷を理由に、前市長の渋谷桂司氏のもとで6館から3館に削減された経緯がある。原田氏は市長選で図書館再開を公約に掲げ、支援者らとともに選挙戦を戦ったが、現実の壁は高かった。
今後、原田氏には公約の実現可能性を慎重に検討する姿勢や、市民への説明責任が求められる。また、今回の教訓を活かし、より現実的な公約づくりが期待される。



