宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、運用停止中の国の基幹ロケット「H3」の打ち上げ再開を6月10日に決定した。これまでロケットの打ち上げ失敗後の再開には約1年を要するのが常であったが、今回は異例の早期再開となった。幸運な偶然や、政府関係者が「禁じ手」と呼ぶ奇策が功を奏し、半年ほどで「リターン・トゥ・フライト(飛行再開)」への道筋をつけた。
再開への焦りと市場信頼の危機
「再開に1年もかけていたら、マーケットの信頼を失う」——H3ロケット8号機が昨年12月の打ち上げに失敗して以来、政府やJAXAの関係者らが繰り返し口にした言葉である。近年、世界ではロケット打ち上げ回数が急増しており、2021年の136回に対し、2025年は316回と2倍以上に増加した。GPSや通信、気象予測、安全保障などの分野で人工衛星の重要性が高まり、打ち上げ需要が急増しているからだ。
しかし、日本国内に限れば、2022年0回、2023年2回、2024年5回、2025年3回と低迷が続く。政府の基幹ロケットは、大型のH3だけでなく、小型の「イプシロン」も2022年の失敗以降、運用停止状態にある。民間ロケットも衛星軌道投入に成功した例はない。H3の再開が遅れれば遅れるほど、国内外の衛星打ち上げ需要を逃し続ける懸念が強まった。
過去の失敗と異例の早期再開への道
これまでH3初号機(2023年)や先代H2Aの6号機(2003年)が失敗した際、次の打ち上げまで少なくとも1年前後を要してきた。JAXAのロケット開発担当者は原因究明に投入され、先々の打ち上げに向けた実験や燃焼試験が停止する。政府とJAXAの関係者らには「原因究明だけでなく、同時に前に進まなければならない」という焦りがにじんでいた。
早期再開を可能にした二つの要因
早期再開を実現できたのは、二つの要因が重なったためだ。一つ目は、8号機の打ち上げ失敗の原因が比較的早期に特定されたこと。二つ目は、政府関係者が「禁じ手」と呼ぶ異例の措置を講じたことである。具体的には、原因究明と並行して次号機の準備を進める「並行開発」を採用し、通常なら中断される燃焼試験などを継続した。また、国際的な部品調達の迅速化や、過去の試験データの活用など、リスクを取った判断が功を奏した。
これらの取り組みにより、JAXAは半年という短期間で打ち上げ再開の見通しを立てた。関係者は「日本の宇宙開発のプライドを守るため、禁じ手も辞さない覚悟だった」と語る。H3ロケットの再開は、日本の宇宙産業の競争力維持に不可欠であり、今後の打ち上げ成功が期待される。



