法起寺で61年ぶりの再訪、妻との出会いの場を巡る心の終活の旅
昨年の秋、私は妻との出会いの場である斑鳩の道を歩く旅に出掛けました。これは心の終活とも呼べる一人旅で、静かな時間の中で過去を振り返る貴重な機会となりました。法隆寺を訪ね、法輪寺から法起寺へと続く斑鳩の塔巡りの道をゆっくりと歩き、昼過ぎに法起寺に到着しました。
61年ぶりの再訪と休憩所での思い出
受付で「61年ぶりの再訪です」と挨拶を交わし、池越しに三重塔が見える休憩所で一息つきました。ここは、新幹線が開通し東京五輪が開催される直前、妻と初めて声を交わした場所です。当時、白い帽子をかぶった女性が休んでおり、思い切って話しかけると、池越しの三重塔をバックに彼女の写真を撮りました。
寺社巡りの途中だったため、「ご縁があればまたお会いしましょう」と軽く別れを告げ、2日後の京都清水寺での再会を約束しました。福岡に住む大学2年生の私と、東京に住み日本橋の会社に勤める女性が、日本の真ん中の奈良で出会い、2日後京都で再会するという奇跡的な出来事は、私たち二人の人生最大の出来事となりました。
変わらぬ風景と観音様のほほ笑み
現在、法起寺の境内は訪れる人も少なく静かですが、昔と変わらぬ三重塔が静かにそびえ立っています。収蔵庫に収められた十一面観音像を見ると、妻が観音様になってほほ笑んでいるように感じられ、心が温かくなりました。つえを突きながら2日間の旅を続け、思い出のページをめくりながら一人で過ごす時間は、深い感慨に満ちていました。
当初は「これが最後」と思って出掛けた旅でしたが、今では「また出掛けたい」と新たな思いが湧き上がり、再訪を計画中です。この旅を通じて、人生の大切な瞬間を再確認することができました。
小柳義雄(83) 千葉県白井市



