顔合わせから稽古、本番までを1日で――。そんな特殊な演劇が、東京・吉祥寺シアターで上演される。名古屋を拠点とする「優しい劇団」の、「大恋愛」シリーズ第10、11弾だ。主宰の尾崎優人は26歳。一見無謀に見える企画には、先達から引き継いだ演劇愛と現代のリアルが同居している。
デジタルネイティブ世代の演劇史アプローチ
高校時代、演劇部だった尾崎。公務員になろうと思っていた2年生のときに、野田秀樹の「半神」を映像で見て、「これはすごい、と目覚めた」。以来、「誕生日プレゼントは演劇のDVDでした」。現在も暮らす名古屋の実家には、200本以上あるという。「第三舞台」や「劇団☆新感線」を意識するようになり、さらにそれぞれのルーツをたどって、つかこうへい、そして、唐十郎にいきついた。演劇史的なアプローチの背景には、「気になったらネットでずっと情報収集できる」というデジタルネイティブ世代ならではの環境もある。
旗揚げから現在まで
2018年に「優しい劇団」を旗揚げすると、第1回公演では唐十郎「少女仮面」を上演。次に選んだのは野田の作品。その後、尾崎が自ら脚本を書くようになったが、いまでも演劇史へのオマージュが至るところに見られる。
洪水のような言葉と熱量が生む舞台は、観客を圧倒する。しかし、1日で完結させるという試みには、切実な事情が隠されている。それは、現代の若者が抱える時間的・経済的制約だ。尾崎は「多くの人が演劇に携わりたくても、稽古や本番に長期間拘束されることが難しい」と語る。そこで、顔合わせから本番までを1日で行うことで、参加者の負担を減らし、より多くの人に演劇の機会を提供することを目指している。
「大恋愛」シリーズの魅力
「大恋愛」シリーズは、尾崎が描くオリジナル脚本で、毎回異なるテーマで恋愛模様を描く。第10弾と第11弾は、同時期に上演され、それぞれ独立した物語ながら、共通のモチーフが織り交ぜられる。尾崎は「観客が一日で二つの作品を楽しめるように、構成を工夫した」と話す。
今後の展望
尾崎は、「優しい劇団」の活動を通じて、演劇の可能性を広げたいと考えている。「演劇は敷居が高いと思われがちだが、もっと身近なものにしたい。1日公演はその第一歩」と意気込む。今後も、斬新な企画で観客を驚かせていく予定だ。



