スイスで人口制限を問う国民投票、6月14日に実施
スイスで6月14日、人口を1000万人以下に制限する憲法改正の是非を問う国民投票が行われる。提案したのは最大政党である右派の国民党で、外国人労働者など移民の急増により住宅不足や交通渋滞が深刻化したと主張している。一方、反対派は人口制限が有能な技術者や労働力を減少させ、産業競争力に悪影響を及ぼすと訴えており、賛否が割れている。
人口増加の現状と予測
スイス当局によると、2000年に約720万人だった人口は現在約910万人に増加した。早ければ2035年にも1000万人に達するとの予測もある。国民投票では、2050年までに人口を1000万人以下に抑える憲法改正が求められている。具体的には、人口が950万人を超えた場合、外国人の居住申請条件を厳格化し、1000万人を超えた場合には欧州連合(EU)との人の自由な移動を認める協定を破棄するなどの措置を講じる。
国民党の主張
国民党は人口増加の主因を移民と見なす。2000年に約142万人だった外国人居住者は2024年には約248万人に増加し、人口に占める割合は欧州でも高水準の27%に達した。党首のマルセル・デトリング氏は、住宅不足や家賃の高騰、交通渋滞、教育や医療の質の低下を指摘し、「我々は将来を考えずに目先の利益のために多くの人を受け入れてきたが、今や危機に直面している」と強調する。
反対派の立場
これに対し、スイスの内閣にあたる連邦参事会は今回の採決を否決するよう勧告している。左派政党からは「欧州諸国との関係が破壊され、スイスが孤立する」(緑の党)、「極端で混乱を招く内容だ」(社会民主党)との反対意見が上がる。産業界も経済への打撃を懸念し、主要経済団体エコノミースイスは、人口制限が外国人労働者の多い医療分野やサービス産業に深刻な影響を与えると警告し、「人々の生活の質は低下し、スイスは重大な危機に陥る」と述べている。
世論調査の結果
地元メディアが5月に行った世論調査では、人口制限への支持率は45%で、不支持率の52%を下回っているが、情勢は不透明だ。スイスの社会問題に詳しいベルン大学のクリスチャン・ヨプケ名誉教授は、国民投票の結果にかかわらず、反移民の動きはスイスを含む欧州全体で今後も続くとし、「政府は鉄道網や道路の整備など、人口増加問題への解決策を講じる必要がある」と指摘する。
国民投票の背景
スイスでは国民投票が民意を直接問う手段として伝統的に重視され、10万人以上の署名などの条件を満たすと憲法改正を求める国民投票を発議できる。2001年にはEU加盟の是非を問う国民投票が行われ、否決された経緯がある。



