徳島県立新ホールの計画を巡り、前知事時代の旧計画をテーマにした民間団体の展覧会が、開催直前に県の要請で中止に追い込まれた。会場が県有地にあり、県は「県による発信だと誤解を招くおそれがある」などと説明している。旧計画の設計者で、展覧会を手がけた建築家の石上純也氏は「表現の自由を踏みにじる行為だ」と反発している。
展覧会中止の経緯
県立ホール計画は、飯泉嘉門・前知事時代に徳島市文化センター跡地に建設する案が浮上。建設費は約194億円で、県は設計・施工を担う共同事業体(JV)と基本協定を結んでいた。しかし、2023年4月の知事選で計画の見直しを掲げた後藤田正純氏が飯泉氏らを破って当選。後藤田氏は就任後、建設地を変更し、ホールの規模も縮小して建設費を抑える新たな計画を打ち出した。
新計画は建設資材や人件費の高騰などで、昨年2度にわたって事業者の公募が不調に終わった。現在3度目の公募手続きが進んでいるが、まだ着工の見通しは立っていない。
展覧会の内容と準備
今回の展覧会は、日本建築家協会徳島地域会が、旧計画の設計を手がけた石上純也氏に話を持ちかけた。「現計画がなかなか進まない中、住民に県立ホールについて考えてもらうきっかけにしたいと考えた」(徳島地域会)という。旧計画の設計図やイメージ図、建物模型などを展示し、計画変更に至る経緯などを紹介する内容で、6月1日から開催予定だった。
展示物のうち、県が公表している図面などは、県のホール整備担当の部署に使用許可を得ながら、準備を進めていた。しかし、会場に予定していた市内のイベントスペースが県有地の港湾エリアにあり、これを所管する県の別の部署からイベントスペースを運営する事業者に対し、会場の貸し出しをやめるよう要請があったという。
県の説明と反発
県港湾政策課によると、事業者に対して会場使用の中止を要請した理由として、「県有地での開催が県による発信だと誤解される恐れがある」と説明している。また、県のホール整備担当部署は図面使用許可を与えたが、会場使用については別問題だとしている。
石上氏は「建築家として、公共性の高い計画について市民と議論する場を設けることは重要な責務だ。県の対応は表現の自由を侵害するものであり、到底受け入れられない」と述べ、強い不満を示した。日本建築家協会徳島地域会も「事前に県と十分な調整を行った上で準備を進めてきた。一方的な中止要請は納得できない」とコメントしている。
この問題は、公共施設の計画を巡る情報公開や市民参加のあり方、さらには表現の自由の範囲について改めて問いかけるものとなっている。



