上野恩賜公園の西郷隆盛像を起点に、晩春の上野散歩を楽しみながら向かう先は、アメ横の一角に店を構える老舗居酒屋『酒亭 じゅらく 上野店』。ここで味わえる人気メニュー「西郷丼」は、薩摩料理の要素をふんだんに盛り込んだボリューム満点の丼ぶりだ。
西郷像から始まる上野散策
上野公園の西郷隆盛像は、高村光雲が手掛けた明治30年代の作品。脇に従えた薩摩犬のツンも含めて、その存在感は抜群だ。あいにくの雨模様だったが、多くの観光客でにぎわう公園内を歩き始める。桜の季節は過ぎたが、若葉が出始めた桜の木々が公園を彩っていた。上野大仏は閉場時間を過ぎていたが、五條天神や花園稲荷の参道を通り抜け、不忍池へと向かう。弁天堂周辺には「めがね之碑」や「スッポン感謝之碑」など、昔からの商業者たちが建立したユニークな石碑が点在する。
アメ横から飲み屋横丁へ
池の南側を回り、上野広小路東側のアメ横に到着。海産物や輸入雑貨の小店が並ぶブロックをさらに東へ進むと、JR高架線の狭間に続く飲み屋横丁がある。その一角に『酒亭 じゅらく 上野店』はある。この店の看板メニュー「西郷丼」を味わうために、西郷像から出発したのだ。
西郷丼の魅力
西郷丼は、1日限定10食のランチメニュー(2315円、味噌汁とお新香付き)。筆者は約20年前にこの丼を味わったことがある。当時は西郷像脇のショッピングビル内にあった「レストラン聚楽台」で提供されていた。その構造は、エッセー『なぞ食探偵』に記述されている。
「アジサイの絵柄の大きな丼に、なんともゴージャスな具が盛り付けられている。真ん中にホウレンソウで縁どりされた温泉玉子が置かれ、豚の角煮(三個)、サツマ揚げ、明太子、鶏そぼろ、サツマイモ天、といった面々がそれを取り囲む。」
あれから20年、久しぶりに注文した西郷丼の具の布陣は多少変わっていた。豚の角煮(鹿児島産黒豚使用)、明太子、温泉玉子は不動だが、鶏そぼろは「さつま純然鶏もも岩塩焼き」に置き換わり、「きびなごの唐揚げ」が加わり、さつま揚げには西郷さんのキャラ絵が刻まれている。しかし、ご飯の量は茶わん2杯分ほどあり、相変わらずのボリュームだ。
店の歴史
店の責任者・川喜多淳一さんの名刺には「笑顔をつないで100周年 1924」のロゴが記されている。1924年(大正13年)は関東大震災の翌年で、当初の「須田町食堂」は神田須田町交差点の広瀬中佐像の西向かいにあったという。創業者は15歳で新潟から上京した加藤清二郎氏。リーズナブルな洋食(コロッケやハムライス)が震災後の新東京で人気を博し、上野駅前の店舗は高度成長時代に上京者が初めて味わう洋食として知られるようになった。食堂だけでなく、デパートや旅館業にも進出し、かつて深夜のテレビCMで「じゅらくよ〜」とマリリン・モンローのそっくりモデルがささやく伊東や水上の温泉ホテルも同じ「じゅらく」グループだ。
店舗情報
酒亭 じゅらく 上野店
住所:東京都台東区上野6-11-6
電話:03-3831-9640
営業時間:11:30~23:00(日曜、祝日11:30~22:00)
定休日:無休
※掲載した店舗や施設の臨時休業および年末年始・ゴールデンウイーク・お盆休みは営業時間などが変更になる場合があります。事前にご確認ください。
※2026年5月1日時点の情報です。
※料金は原則的に税込み金額表示です。



