松村敏弘教授が原発再稼働の課題を指摘「動くかわからない原発は最悪」
東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)が約14年ぶりに再稼働したことを受け、エネルギー政策をめぐる議論が活発化している。政府や東京電力は電力の安定供給に原発が不可欠と説明してきたが、その真の必要性について疑問の声も上がる。この問題について、経済産業省のエネルギー関連有識者会議で長く委員を務める松村敏弘・東京大学教授にインタビューを行い、詳細な見解を聞いた。
原発の必要性と不確実性のリスク
松村教授は、原発の役割について次のように語る。「原発は、いったん稼働を開始すれば、不祥事や定期点検で停止しない限り、電力需給の改善に大きく貢献します。しかし、動くかどうかわからない原発を維持することは、需給を考えるうえで最悪のシナリオです。原発が動くかもしれないという不確実な状況では、電力会社が原発以外の発電所、例えば再生可能エネルギー施設や火力発電所を新設しても、収益を上げられないリスクが生じます。その結果、電力需給が逼迫しているにもかかわらず、必要な発電所への投資が進まないという悪循環が起こり得ます。」
この指摘は、柏崎刈羽原発の再稼働を契機に、日本のエネルギー政策が直面する根本的な課題を浮き彫りにしている。松村教授は、公共経済学や産業組織論を専門とし、東京大学社会科学研究所で助教授を経て2008年から教授を務める。その豊富な知見から、政策決定における透明性と長期視点の重要性を強調する。
東日本と西日本の電力事情の違い
さらに、松村教授は地域間の電力需給格差にも言及。「東日本と西日本では、電力の需給状況や発電インフラが異なります。柏崎刈羽原発の再稼働は、東日本の電力安定化に寄与する可能性がありますが、全国一律の原発依存政策では、地域特性を無視した非効率な結果を招く恐れがあります。例えば、西日本では再生可能エネルギーの導入が進んでいる一方で、東日本では依然として原発に頼る部分が大きい。このような差異を考慮した、柔軟なエネルギー戦略が求められています。」
インタビューでは、福島第一原発事故を起こした東京電力が再び原発を運転することへの社会的な賛否も話題に上った。松村教授は「事故の教訓を踏まえ、安全性と信頼性の向上が最優先されるべきです。しかし、動くかわからない原発を抱えることは、経済的にも政策的にも大きな負担となります。政府は、原発の稼働確実性を高めるための明確なロードマップを示す必要があるでしょう。」と述べ、政策の一貫性を求めた。
この議論は、連載「電ゲン論」の一環として行われ、エネルギー政策の多角的な検証を目指している。松村教授の見解は、原発再稼働を単純に賛成か反対かで論じるのではなく、その不確実性がもたらす長期的な影響を考える重要性を提示している。