群馬・大泉町の多文化体験ツアーが共生社会と観光を促進、浜松市も参考に
大泉町の多文化体験ツアーが共生社会と観光を促進

群馬・大泉町の多文化体験ツアーが共生社会と観光を結びつける

昨年秋に連載「共生考―浜松ブラジル人の現在地―」を取材する中で、群馬県大泉町で続くユニークな体験ツアーに注目が集まっている。このツアーは、ブラジル食材が豊富なスーパーの見学や日系人による講演を組み合わせた「インターナショナルタウン体験」として、共生社会について考えるきっかけを提供している。県内外から学生や社会人が訪れ、好評を博しているという。

まるで南米旅行のようなスーパー見学

ツアーの一環として訪れるスーパー「タカラ」では、ポンデケージョやパウミットなどブラジルで親しまれる商品が並び、ポルトガル語の店内放送が飛び交う。校外学習で参加した前橋市の高校生たちは、「南米旅行に来たみたい!」と興奮気味に語り、異文化体験を楽しんでいる様子がうかがえる。

このツアーは、町観光協会が2010年に開始したもので、町民の約2割が外国人で、その半数がブラジル人という地域特性を生かしている。自動車や電化製品、食品工場が集積する大泉町は、1990年代から日系人が来日し定住してきた歴史があり、浜松市と同様の背景を持つ。浜松ナンバーの車が走るなど、両地域の往来も活発だ。

本音で語る日系人講演会

ツアーの中で特に印象的なのが、日系人による講演会だ。10歳で来日した日系3世の平野勇パウロさん(47)は、「外国人が増えて日本人の仕事が奪われるとの声もあるが、工場労働を希望する日本人は少なく、外国人がいないと成り立たない地域がある」と指摘する。

講演では、生い立ちや日系人の高齢化など率直な話題が取り上げられ、NGなしの質問コーナーでは、高校生たちが「日本人ファーストについてどう思うか」「自分は何人だと思うか」といった素朴な疑問をぶつける。平野さんは、「日本では『外国人問題』とひとくくりにされるが、旅行者、永住者、不法滞在者では立場も課題も様々だ」と本音で応え、参加者に深い気づきを与えている。

講演を聴いた松永乃愛さん(17)は、「日本に貢献している外国人もたくさんいることが分かった。日系人は架け橋のような存在だ」と感想を述べる。鈴木亜矢教諭(50)も、「外国人と一緒に暮らし働くことが増える中で、若いうちに繊細な問題を語り合うことは大切だ」と強調する。

経済効果と地域活性化

このツアーは、全国の高校や大学の学習、外国人従業員がいる企業の研修などで200回以上開催され、町にホテルが開業するなど経済効果も表れている。婚活情報サイトでも取り上げられ、「まるで小さな世界旅行」と評されるなど、観光資源としての評価も高まっている。

町観光協会の宮地克徳会長は、「町が活気づいてきた。地域の日本人が魅力に気付き、『外国人がたくさんいて面白い町だよ』と自慢できるようにしていきたい」と意気込む。大泉町の取り組みは、外国人文化を観光資源に変え、共生のあり方を考える機会を提供している。

浜松市も参考にしたい取り組み

南米人向けのスーパーやレストランが多く存在する浜松市でも、この取り組みに注目が集まっている。浜松市国際課の松井由和課長は、「ブラジル人が多い特徴を、常設の観光事業に生かすアイデアは考えたことがなかった。ぜひ参考にしていきたい」と語り、今後の展開に期待を寄せている。

大泉町の多文化体験ツアーは、単なる観光事業を超え、共生社会の実現に向けた重要な一歩として、地域を越えた影響を与えつつある。