神奈川の若手農家がSNSで農業の魅力発信 旬野菜の「ライブ感」配信で食卓つなぐ
若手農家がSNSで農業発信 旬野菜の「ライブ感」配信 (15.02.2026)

神奈川の若手農家がSNSで農業の魅力を発信 旬野菜の「ライブ感」配信で食卓つなぐ

神奈川県藤沢市の若手農家、亀井尋仁さん(31)が、交流サイト(SNS)を駆使して農業の現場を発信している。祖父の代から続く「亀井農園」で丹精込めて育てた旬野菜の魅力を、臨場感あふれる動画で伝え、多くの人に農業の楽しさを知ってもらおうと奮闘中だ。

都市近郊の広大な農園で育まれる旬の恵み

JR藤沢駅周辺から車で約30分の場所に位置する亀井農園は、耕作面積が5.5ヘクタールと広大だ。横浜スタジアムのグラウンド面積の約4.5倍に相当するこの農園では、土の香りが漂い、街中より冷たい風が吹き抜ける。亀井さんは「寒い朝は土の中でも作物が凍るんですよ」と、いたずらっぽい笑顔で語る。

農業高校を卒業後、自然に農業の道を選んだ亀井さん。「遊び場だった畑や田んぼが職場になった感じ」と気負いはなく、季節を体感しながら暮らす日々を送っている。そんな生活から生まれた願いは、「旬の物を、一番おいしい時に食べてもらいたい」という思いだ。

農園で収穫される旬野菜は、特に味わい深い。焼くと青い部分まで甘くなるネギは、何もつけずにあっという間に1本食べてしまうほど。軽くゆがいた菜の花のほろ苦さは、待ち遠しい春の香りを感じさせる。

SNSで農業の「ライブ感」を伝える

丹精込めて作った野菜を多くの人に届け、農業の現場を伝えたい――。そんな思いから、亀井さんはSNSでの発信に力を入れている。一昨年秋から1年間は、JAグループの動画配信チャンネルで「第6代農Tuber」として活動。農作業の様子や収穫の楽しさを発信した。

任期を終えた昨秋からは、個人のYouTubeチャンネル「亀井農園ごきげん野菜ch」を開設。農作業の様子や農家の日常を伝えている。ブロッコリーを収穫する早業や、軽快な音楽に乗ってわらを放る動画は、つい繰り返し再生してしまう魅力にあふれている。

動画のポイントは「ライブ感」だ。亀井さんは「音に注意してみて。収穫で茎に包丁が入る音は作物によって違うんです。それって普通は農家しか聞けないでしょ」と語る。撮影を担当する妻のみのりさん(31)も臨場感にこだわり、作業の手元を見せるように心がけている。

夫妻と息子、現役農業者の祖父母と両親の7人分の食事を作る動画も注目を集めている。季節のとれたて野菜をふんだんに使った料理は、視聴者に自然と食欲をそそる。

直営八百屋の夢と農業への誇り

亀井さんの将来の夢は「直営の八百屋」を開くことだ。「畑の野菜を自由に収穫して焼ける『畑バーベキュー』もいいですね」と、農業愛にあふれるアイデアを語る。その源にあるのは、動画同様、「おいしいものを皆に届けたい」という強い思いだ。

しかし、農業を取り巻く環境は厳しい。昨夏の猛暑時には、ブロッコリー1株ずつに水やりをして夏枯れを防いだ。都市近郊での農業は消費者が近い利点がある半面、においやほこりなど周囲の理解も必要だ。

コメや野菜離れにも危機感を覚えている亀井さんは、「市場では農家の希望小売価格はなく、相場で価格が決まる。肥料や資材の高騰など、背景も知ってもらいたい」と訴える。

そんな逆風の中でも、亀井さんは背筋を伸ばして前を見つめる。「食を支える産業に就いている。今ここで頑張れば、日本の農業は何とか踏ん張れる」。誇りと信念を胸に、今日も土をおこし、動画を配信し続けている。

神奈川の農業:都市近郊型の特徴と課題

神奈川県の農業は都市近郊型が中心で、野菜や果物、花卉(かき)生産が盛んだ。県発行の「わたしたちのくらしと神奈川の農林水産業」(2025年度版)によると、2023年の生産量は大根やコマツナが全国5位、キャベツが7位。キウイフルーツは4位、パンジーは3位と上位を占めている。

神奈川の農業は食料生産に加え、環境保全にも貢献している。しかし同時に、高齢化や後継者不足などの課題も抱えている。亀井さんのような若手農家の挑戦は、こうした課題を乗り越える一つのヒントとなるかもしれない。