「飛鳥・藤原」世界遺産登録勧告、地元首長ら喜び「頂の先が見えた」
「飛鳥・藤原」世界遺産登録勧告、地元首長ら喜び

日本の古代国家誕生の歩みを示す遺跡群「飛鳥・藤原の宮都」(奈良県橿原市、桜井市、明日香村)が、世界文化遺産への「登録」の勧告を受けた6日、地元の首長らは「登録へ大きく前進した」と喜びをかみしめた。遺跡群を案内するガイドや住民からも祝福の声が上がった。

地元首長らが会見

世界遺産「登録」が勧告されたことを受けて、奈良県の山下真知事と構成資産がある地元3市村長は6日午前7時から、県庁で記者会見を開いた。

明日香村の森川裕一村長は「世界遺産登録という頂の先がようやく見えた」と笑顔をみせた。2007年に国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界遺産候補の暫定リストに入ってから20年近くかかったことに、「飛鳥の価値を大事にしようとする気持ちを醸成するのに必要な時間だったのではないか。登録で、地域が良くなっていくように努力したい」と感慨深げだった。

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世界遺産「飛鳥・藤原」登録推進協議会会長の山下知事は「7月の世界遺産委員会まで気を緩めることなく、一丸となって取り組みを進める」と話した。

住民やガイドも歓迎

構成資産の一つで、蘇我馬子の墓とされる石室を見られる石舞台古墳などがある明日香村には、午前中から多くの人が訪れていた。

橿原市の小学校教員(34)は、ニュースを見て訪れたといい、「学校の遠足などで10回以上訪れていて、愛着のある場所。登録されるのを機に、古代の文化や風景が残る地域の魅力を世界中の人に知ってもらいたい」と喜んだ。

橿原市の岩井雅子さん(53)は、飛鳥時代の歴史的文化財の魅力を伝える「飛鳥地域プロガイド」として、英語での案内を行ってきた。「貴重な歴史遺産が生活の中でどのように守り伝えられてきたのかという話も交えてガイドに取り組みたい」と気を引き締めた。

石舞台古墳近くのレンタルサイクル店で働く橿原市の男性(39)は、「これからは、閑散期の夏場も忙しくなりそうですね。周辺には見所が多く、とても1日では回りきれないので何度も訪れて堪能してほしい」と話した。

漫画家・里中満智子さんのコメント

「天上の虹」で藤原京を造営した持統天皇の生涯を描いた漫画家の里中満智子さん(78)は、「藤原京は、先人たちが国の存続をかけて取り組んだ大事業。後の平城京建設の際に、柱や瓦など使える建材は再利用された。モノを大切にという日本人の精神をこの機会にもう一度見つめ直せればと願っています」とコメントした。

文化財課長の思い

「ようやく大きな山場を越えた。登録の実現まで、まだまだ油断はできないが」――奈良県明日香村教育委員会参事兼文化財課長の小池香津江さん(56)もユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)の勧告に安堵の表情を浮かべた。

小池さんは長野県出身。子供の頃から歴史好きで、奈良大を卒業後、1992年に奈良県立橿原考古学研究所に入所。邪馬台国の有力候補地、纒向遺跡(奈良県桜井市)の発掘調査などに関わった。

研究一筋のキャリアを思い描いていたが、2009年、県教委への異動を命じられた。さらに20年には村教委文化財課長に。世界遺産登録に向けたてこ入れのためだった。

自身は飛鳥時代より古い弥生・古墳時代が専門だったこともあり、「青天の霹靂」。事務作業の多さに戸惑いつつも勉強を重ね、先輩たちに話を聞くなどして世界遺産の推薦書の素案を練った。文化庁から注文がつくたび、書き直しを重ねた。

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世界遺産は、遠い世界の出来事だと思っていた。研究から遠ざかり、時には焦りや寂しさを感じることもあった。しかし「村に来たことで、遺跡を保存し、未来につなげる動きを強く実感できた。違う扉が開いた感じ」という。気づけば異動から7年目になる。「登録されてもそれがゴールではない。満足することなく、より多くの人に飛鳥・藤原の魅力を知ってもらいたい」と決意を新たにしている。