引っ越すなら桜がきれいな場所がいい。ルールと言うほど大げさなものではないが、いつのころからか仕事で転居をするたび、そんな条件で住まいを探してきた。親が転勤族で子どものころから引っ越しを繰り返してきた私には、古里がない。それでも桜は人生のその瞬間をその場所で過ごした記憶や感情とともに、私をその土地と結び付けてくれる。地域の人々に守られ、育てられてきた桜の木々。その存在は、私にとっての古里の象徴なのだろう。
そんな桜が今、危機にひんしている。桜の木に産卵し、樹木の中を幼虫が食い荒らしてしまう「クビアカツヤカミキリ」。埼玉県内でもその被害が急速に広がり、桜の街路樹の半数以上が影響を受けている地域もある。被害を受けて各自治体は対策を強化。住民にも発見した場合には、踏みつぶして駆除してほしいと呼びかけている。
取材の帰り道。初夏の桜並木の下で、一組の老夫婦が手をつないで歩いていた。この桜の景色を守りたい。



