北極海への熱輸送量が過去20年で1.5倍に急増 太平洋からの温暖化影響が深刻化
北極海の熱輸送量が1.5倍に増加 過去20年で急増

北極海への熱輸送量が過去20年で1.5倍に急増 太平洋からの温暖化影響が深刻化

海洋研究開発機構を中心とする国際研究チームが、太平洋から北極海の「カナダ海盆」へ流入する海水の熱輸送量が、過去約20年間で1.5倍に増加したことを明らかにした。この研究成果は2月13日、国際的な学術誌に掲載され、地球温暖化が北極域の海洋環境に与える影響の深刻さを浮き彫りにしている。

観測データが示す明確な増加傾向

研究チームは、北極海に設置された観測機器から収集された詳細なデータを分析。その結果、太平洋側からベーリング海峡を経由して北極海に流れ込む海水の熱輸送量が、2000年から2022年の間に1.5倍に増加していたことが判明した。特に注目すべきは、2010年代後半から熱輸送量の急増が始まったという点である。

流速自体には大きな変化が見られなかったものの、海水温が長期的に上昇していたことが主な要因とされている。人工衛星による海面水温の観測データとも一致するこの傾向は、気候変動の影響が北極海の海洋循環に直接的な変化をもたらしていることを示唆している。

複合的な環境変化が生態系に与える影響

研究を主導した海洋研究開発機構の伊東素代副主任研究員は、「海洋温暖化は単なる水温上昇にとどまらず、複合的な環境変化を引き起こし、海洋生物に深刻な影響を与える可能性がある」と指摘。継続的な観測と研究の重要性を強調した。

地球温暖化の影響で北極海の海氷は著しく減少しており、特に太平洋側での減少が顕著である。海氷が減ることで太陽光の吸収が増え、さらに海水温が上昇するという悪循環が生じている。この現象が、太平洋からの熱輸送量の増加に拍車をかけていると考えられている。

バロー岬沖での長期観測プロジェクト

研究チームは、太平洋からの海水が主に流入する米アラスカ州のバロー岬沖において、海水温と流速の計測を2000年から開始。海洋研究開発機構が推進する「北極域研究加速プロジェクト」の一環として、2024年9月には観測機器の設置作業も実施されている。

これらの観測データは、気候変動が北極海の物理的・化学的環境にどのような変化をもたらしているかを理解する上で極めて貴重な情報源となっている。今後も継続的なモニタリングを通じて、海洋温暖化のメカニズム解明と生態系への影響評価が進められる予定である。

北極海の環境変化は、地球全体の気候システムにも影響を及ぼす可能性があり、国際的な協力による研究の推進がますます重要となっている。