大阪府警捜査4課の暴行事件、35人処分の異例事態
大阪府警捜査4課による捜索中の暴行事件は、同課員ら12人が1月23日、免職や停職などの懲戒処分となり、指導も含めた処分人数が35人に上る異例の事態となった。暴力団など組織犯罪に対峙する捜査員らは、なぜ暴走したのか。その背景には、現場と上層部の意思疎通の齟齬や、長年にわたる「力の大阪」を自負する組織文化が深く関わっている。
捜索現場での暴行、方針伝達の齟齬が背景
府警の処分時の発表によると、暴行は昨年7月15日から16日にかけて発生した。4課の捜査員ら28人が、大阪市内のビル一室のレンタルオフィスを全国最大規模のスカウトグループ「ナチュラル」の拠点とみて、職業安定法違反容疑で捜索。この際に複数の捜査員が捜査対象だった男性3人をそれぞれ殴打したとされる。
暴行が起きた捜索現場の責任者だった時長力・元警部補(51)は、自らの公判で「暗証番号を聞き出すことを重視したからだと思う」と語った。ナチュラルが独自開発した秘匿性の高い通信アプリ「チャットアルファ」を解析するため、スマホや端末のロックが解除された状態で押収するか、暗証番号を聞き出すことが、現場サイドが当初から共有していた捜査の主目的だった。
しかし、上層部はその後、目的を変更していた。4課長らは「アプリを開いたまま押収するのは難しい」として、逮捕を優先すると決めていた。だが、この方針変更が現場には伝わっていなかった。時長元警部補の直属の上司で捜査全体を指揮していた警部(停職6か月)は内部調査に対し、「現場に方針変更は伝えていた」と説明しており、食い違いが生じた原因は現在も不明だ。
現場では男性らが暗証番号の説明を拒んだことをきっかけに、捜査員による集団暴行へ発展していった。
「力の大阪」を自負する捜査4課の組織文化
府警の捜査4課は1961年に発足し、暴力団など組織犯罪を専門とする。80年代には当時の山口組の内部分裂に伴う組員同士の殺傷事件などの捜査で全国に名が知れ渡った。近年は、動画投稿サイトで捜査員が「大阪や!」「4課やぞ!」と怒声を飛ばすニュース映像が閲覧され、「強面集団」と見られている側面もある。
職務中の力の行使は、警察官職務執行法などにより、相手の抵抗などに応じて「有形力の行使」として一定程度、許容されている。4課では昔から暴力団に対処してきた性質上、特に行使する場面が多かったと複数の捜査員が取材に明かす。ある捜査員は「相手も凶暴で、舐められたら捜査にならない」と話す。
他県警で暴力団捜査を担当していた刑事OBも「府警の4課は特にプライドが高く、『力の大阪』を自負していた」と指摘する。今回の事件で特別公務員暴行陵虐致傷罪などに問われた阪口裕介・元巡査部長(33)は逮捕後、「4課のガサ(捜索)として、どんな相手にも負けたらアカンと思っていた」と供述していたという。
再発防止策と専門家の指摘
一連の問題を受け、府警幹部の一人は「強い気持ちを持つのは当然だが、適正な手続きを無視していいはずがない。指揮系統や情報共有にも問題があり、暴走を許してしまった」と悔やむ。府警は再発防止策として、指導の強化や、難度の高い捜索現場への階級の高い警察官の配置、4課への外部からの人材配置などに取り組むことを方針として掲げた。
別の幹部は「反省すべき点は反省する。ただ、4課の弱体化を招いて犯罪組織を利する結果になってもいけない」と語る。
元警察大学校長の田村正博・京都産業大教授(警察行政法)は次のように指摘する。「暴力団などに長期的に向き合う中で、力の行使も含め、一種の惰性が生じていなかったか。組織犯罪の重点は、暴力団から匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)へと移ってきている。捜査側もデジタル技術の高度化など時代に応じた変化が求められる。警察である以上、有形力の行使を迫られる場面はあるので、やむを得ないとされる場面を整理し、再教育する必要がある」