韓国の李在明(イジェミョン)大統領は4日、就任から1年を迎えた。革新系でありながら理念に縛られない「実用主義」を掲げる李氏の支持率は高く、3日に投開票された統一地方選では与党「共に民主党」が全国的に優位に立った。尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領による「非常戒厳」宣言の後遺症で保守系最大野党「国民の力」が混迷を続ける中、順調に見える政権運営の光と影を探る。
個人投資家に届く株高の恩恵
「あ、また上がってる」。5月末、ソウルの高級住宅地江南(カンナム)に住む主婦、チョン・ソヨンさん(60)がスマートフォンに目を落とした。表示されていたのは半導体大手SKハイニックスの株価。上がり続ける同社株を買っては売りを繰り返し、この日も利益確定のために売却したばかりだった。人工知能(AI)向けメモリー半導体の需要増で空前の活況を呈する同社やサムスン電子など、国内株への投資を始めたのは昨年10月。SK株はその時から6倍超に急騰した。これまで計5千万ウォン(約520万円)を投じ、得た利益1500万ウォンでタイのゴルフ場会員権を購入。「日々の活力源」と毎朝、アプリで値動きをチェックする。
チョンさんのような富裕層に限らず、韓国人の3人に1人は株投資を行っている。李政権は、歴代政権を悩ませてきたソウルの地価高騰を招く不動産投資への規制を強化する一方、個人投資家の所得を増やす税制優遇などにより株式市場への資金誘導を進めてきた。半導体株の好調もあり、韓国総合株価指数(KOSPI)はこの1年で2770から8000超へ急伸した。チョンさんも最近、住居とは別に所有していた投資用マンションを売却。李政権の不動産規制を念頭に、株に乗り換えた形だ。株価高騰は「企業のおかげ」と受け止めるが、「政策がうまくかみ合った」とも評価する。
支持率は高いが、光と影
「良い印象はなかったけど、大統領になってみたら仕事はできるわね」。チョンさんはこう語る。韓国ギャラップの世論調査で、李氏の支持率は一貫して60%前後の高水準を維持。直近の調査では64%で、支持理由は「経済・民生」24%、「外交」12%、「職務能力・有能さ」7%の順に多い。肯定的な評価が91%に達する革新支持層だけでなく、中道層の64%、保守層の41%も「うまくやっている」と答えた。チョンさんの出身は保守地盤の南部慶尚南道(キョンサンナムド)で、当然のように保守政党を支持してきた。しかし、トランプ米政権との関税交渉を日本と同程度の条件でまとめた李政権の手腕には好感を抱く。時事評論家の金俊一(キムジュンイル)氏は「実用主義を掲げる政権が保守層にも浸透している」と分析する。
一方、別の研究者は「国民の生活に直結する経済や、目に触れやすい外交では実利の追求を貫く一方、別の分野ではスタンスを使い分けている」と指摘する。典型例が、共に民主党議員が4月に国会に提案した特別検察法案だ。前政権下で検察の恣意的な捜査によりでっち上げられたとする起訴の取り消しを可能にする内容で、李氏の意をくんだとみられている。李氏は公職選挙法違反など五つの事件を抱え、大統領在任中は進行が停止されているが、法案が成立すれば退任後も裁判が行われない可能性がある。
「まるで独裁者じゃないか」。ソウル近郊の仁川(インチョン)で暮らす男性(40)は語気を強める。IT系の職場の激務で体調を崩して退職し、求職中の今年2月に株式投資を始めて「小遣い程度」を稼いだという。株価の上昇は歓迎するが、統一地方選では「選ぶ政党がない」と不満を漏らす。法案に対する有権者の厳しい視線に、ある革新系の陣営関係者は「選挙前の国会提案はミス。起訴を取り消そうとする大統領の執着が、リスクになりかねない」とぼやいた。



