プルデンシャル生命の巨額不正 組織構造の歪みが生んだ「無限連鎖」営業の限界
不祥事に揺れるプルデンシャル生命保険において、営業を担うライフプランナー(LP)たちは深刻な混乱の只中に置かれている。2026年2月初旬、あるLPは本社のお客様センターから「1月 郵送費」というメールを受け取った。これは顧客からの保険解約連絡を受けた際に手続き書類を送付する郵送費を、担当LPの給与から天引きする旨を伝える通知であった。
同社では、このような郵送費を含む全ての営業経費をLPが自己負担する仕組みが採用されているが、不祥事発覚後もこのルールに変更はなく、例外扱いされることはなかった。社名のロゴカラーに由来する「ブルー」はかつてプルデンシャル生命の象徴であったが、顧客からの金銭詐取など総額31億円に及ぶ不正が明るみに出たことで、その信用は大きく墜ちてしまった。
経営陣の危機感の薄さが招いた事態の悪化
1月に巨額不正が公表されて以降、このLPの顧客からも解約の申し出が相次いでいる。書類の郵送費は1件あたり約180円と小額ではあるものの、不正に関与せず誠実に業務を遂行してきたLPにとっては、むなしさと悔しさが募るばかりである。将来の見通しが全く立たない状況に陥り、問題を起こした同僚LPへの怒りも感じている。
しかし、より強い感情は経営陣に対する不信感にある。「経営陣の危機管理対応の失敗が、ここまで事態を悪化させたと思えてならない」という声が漏れる。調査内容を「脱色」したとされる経営層の姿勢が、組織全体のモラルハザードを助長した可能性が指摘されている。
「無限連鎖」営業モデルの限界と歪んだ組織構造
プルデンシャル生命では、成果主義を徹底した営業体制が長年にわたり構築されてきた。このシステムは時に「無限連鎖」と形容されるほど過酷なノルマと競争を生み出し、それが不正行為の温床となった側面がある。営業経費の全額自己負担という負担も、LPたちに過度なプレッシャーを与え続けた。
カリスマ創業者への妄信的な追随や、顧客との「密」な関係を重視する企業文化が、適切なチェック機能を弱体化させた経緯も見逃せない。これらの要素が複合的に作用し、31億円という巨額の不正が組織的に放置される結果を招いたのである。
現在、同社では社長辞任を含む経営陣の刷新が進められているが、信用回復への道のりは険しい。生保業界全体に波及する影響も懸念されており、規制強化や業界の自主的な改革が求められる状況が続いている。プルデンシャル生命の事例は、金融機関におけるガバナンスと倫理経営の重要性を改めて問いかけるものとなった。