時速320キロで疾走する新幹線「はやぶさ」などが、カラスとの終わりなき知恵比べを繰り広げている。毎年春先から初夏にかけての繁殖期に、カラスの巣作りが原因で停電が頻発し、運行ダイヤに大きな影響を及ぼしているからだ。JR各社は従来の巡回点検や鳥よけネットといった手法に加え、近年では人工知能(AI)やヒト型ロボットといった強力な助っ人を投入し、対策を強化している。
カラスの巣が引き起こす停電被害
カラスは見通しの良い高い場所に巣を作る習性があり、電柱や線路をまたぐ「はり」は格好の営巣場所となる。東北新幹線では2026年4月8日、大宮駅構内の電柱にカラスの巣が発見され、撤去作業のため約25分間運転を見合わせた。翌9日には宮城県内の新幹線総合車両センターで停電が発生し、新幹線が約1時間にわたり営業運転を開始できなくなった。これは架線近くに飛来したカラスが感電したことが原因とみられている。
東海道新幹線でも4月22日、新大阪駅に停車中の「のぞみ」で、カラスが屋根上のパンタグラフに衝突し感電する事故が発生。安全確認のため、計27本の列車が最大40分以上遅延した。
JR各社の被害実態
JR東日本によると、管内の東北、上越、北陸新幹線では、鳥類による停電が年平均で約10件発生している。JR東海でも東海道新幹線で同様の停電が約5件発生しており、そのほとんどがカラスによるものとされている。トロリ線など高電圧の設備にカラスが接近することで、感電やショートが引き起こされる。
伝統的対策と最新技術の融合
これまでJR各社は、カラスの巣を早期に発見するための巡回点検や、電柱への鳥よけネットの設置など、地道な対策を続けてきた。しかし、カラスの繁殖力と適応力は高く、従来の手法だけでは限界がある。そこで注目されているのが、AIを活用した監視システムや、ヒト型ロボット「ドクターS」の導入だ。
AIによる巣の早期発見
AI技術を用いた画像認識システムは、線路沿いに設置されたカメラの映像をリアルタイムで解析し、カラスの巣を自動検出する。これにより、人手による点検の負担を軽減し、発見の遅れによる停電リスクを低減できる。
「ドクターS」の活躍
ヒト型ロボット「ドクターS」は、もともと新幹線の点検業務を目的に開発されたが、その高い機動性と精密な作業能力を活かし、カラスの巣の除去作業にも活用されている。高所作業が可能で、人間では危険な場所でも安全に巣を撤去できるため、作業効率が大幅に向上した。
今後の展望
JR東日本とJR東海は、これらの最新技術をさらに進化させ、カラスとの共存と運行安定性の両立を目指している。将来的には、AIが巣の発生を予測し、事前に除去するシステムの構築も検討されている。カラスとの知恵比べは続くが、技術の進歩が新幹線の安全で安定した運行を支えている。



