連載:プライド月間2026。94歳のゲイ活動家、南定四郎さん。国内初のプライドパレードを実現した彼の半生を描くドキュメンタリー映画「熱狂をこえて」が、6月5日から公開される。性的少数者の権利と尊厳を求め、正義を掲げた活動家は、なぜ孤立してしまったのか。映画はパレード史を伝えつつ、一人の人間の挫折と、その受容を描く。
90歳の誕生日から始まる物語
映画は南定四郎さん(94)が90歳の誕生日にこれまでの人生を語り始める場面からスタートする。1931年、樺太で5人兄弟の次男として生まれ、戦後は秋田県で育った。小学生の時に同性にひかれる自分に気付き、「ゲイの世界」を知りたくて20代で上京した。
ゲイ雑誌「アドン」創刊と活動へのめり込み
40代でゲイ雑誌「アドン」を創刊。50代からはエイズ予防法案への反対運動やゲイ解放運動にのめり込んでいく。「人々の結集が巨大な力に」と信じ、その集大成が1994年の日本初のプライドパレードだった。しかし、パレード後、南さんは次第に孤立していく。映画はその挫折と、老いてなお活動を続ける姿を描く。
南さんの活動は、LGBTQコミュニティの歴史を語る上で欠かせない。しかし、彼の強い信念が時に周囲との摩擦を生み、仲間からも距離を置かれるようになった。映画は、活動家としての功績だけでなく、人間としての弱さや孤独も赤裸々に映し出す。
「熱狂をこえて」は、単なる伝記映画ではない。日本におけるLGBTQ運動の歩みを振り返り、社会の変化と個人の葛藤を描くドキュメントである。公開を機に、南さんの足跡とメッセージが多くの人に届くことが期待される。



