食害問題を地域の魅力に 横瀬町がジビエレシピ集を公開
埼玉県横瀬町は、ジビエ(野生鳥獣肉)を使用したオリジナル料理のレシピ集を公式ホームページで公開した。町を含む秩父地域の山間部では、シカなどによる農作物の食害が深刻な問題となっている。この取り組みは、農家にとって厄介な駆除対象を「地元の魅力」へと転換しようとする試みである。
コンテストで選ばれた22種類の料理を掲載
レシピ集には、1月に町内で開催されたジビエ料理コンテストに応募された109種類の中から、入賞作品など22種類が収録されている。各レシピには材料や調理手順、目安の調理時間に加え、一般家庭で作る際の食中毒対策も詳細に紹介されている。
最優秀賞に選ばれた「よだれ鹿」は、中華料理の「よだれ鶏」をヒントにした一品だ。スライスしたシカ肉にピリ辛のたれをかけ、クルミで香ばしさを加える工夫が施されている。また、秩父農工科学高校の生徒が考案した「横瀬の森と鹿」は、地元愛が溢れる料理として注目を集めている。横瀬町の武甲山麓で生産された「武甲紅茶」の葉でシカ肉の臭みを抑え、秩父地域特産のメープルやしゃくし菜を味付けに使用している。
地域連携で進む食害対策
コンテストは、地元の猟友会などで構成される横瀬町鳥獣害対策協議会と、町内のジビエ加工会社「カリラボ」が共同で開催した。審査員を務めた秩父市のイタリアンレストラン「クチーナ・サルヴェ」のシェフ、坪内浩さん(46)は「地域の人々がジビエのおいしさに触れられる素晴らしい取り組み」と高く評価する。
坪内さんの店では、カリラボが処理した横瀬産のシカ肉を使用。無農薬野菜や山菜を添えたローストは、こくとうま味が広がりながらも後味はあっさりとしており、臭みはほとんど感じられないという。坪内さんによれば、捕獲場所と加工所が近く、処理技術が高いため鮮度が良く、「全国各地のジビエと比べてレベルが違う」と太鼓判を押す。
深刻化する食害問題と対策
秩父地域では、農家がシカによる食害に頭を悩ませている。2024年度の被害額は、人口が最も多い秩父市で約1404万円、横瀬町では約196万円に上る。各自治体は、畑を守るための電気柵への補助金支給など、被害防止対策を進めている。
横瀬町では、猟師が設置したわなと通信機器を接続し、作動するとメールで猟師に通知するシステムを2024年度から導入。高齢化が進む猟師の負担軽減を図り、捕獲頭数は増加傾向にあるという。町の担当者は「食害は地域全体の共通課題です。駆除した動物の有効活用策として、町内外の飲食店や一般家庭でレシピ集を参考にしていただければ」と話している。
レシピ集の冊子版(B5サイズ、58ページ)は町役場で配布されており、無くなり次第終了となる。この取り組みは、食害問題の解決と地域資源の活用を両立させるモデルケースとして注目を集めている。



