父のスマホとサングラスに刻まれた思い出 かたみを受け継ぐ
父のスマホとサングラス かたみを受け継ぐ

朝晴れエッセー「かたみ」から、父の形見にまつわる思い出を紹介する。

父のスマホが伝えた訃報

父のスマホの番号は、0903の次に1で始まる。これはガラケー以前の、タクシーに搭載されていた移動電話で取得した番号だ。父は「横浜で最初に電話をつけたぞ」と誇らしげに、後部座席を披露していた姿を思い出す。そのスマホで父の死を知らせ、今は私の手元にある。突然の訃報に、親戚や友人、知人からはお悔やみと感謝、尽きることのない思い出が寄せられた。「安全運転だったね」という言葉は、父にとって最高の勲章だろう。こんな機器にも、父の生きざまは刻まれている。名義を変えて私が引き継ごうかと考えている。

40年前のサングラス

遺品整理で見つかったサングラス。ケースに記された購入年月日は、約40年前だ。平たいティアドロップ形で、今どきのデザインではない。娘に見せれば「だっさ」と一蹴されることは間違いない。なぜか父がこのサングラスをかけた時の顔を思い出せない。ああ、そうか。あの頃、私は父と目を合わせることがなかったのだ。手鏡に、そのサングラスをかけた自分を映してみる。うん、だっさ。

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父の声が聞こえた帰り道

実家からの帰り道、閉鎖中の料金所が数台連なっていた。ほどなくゲートが開き、点灯した「ETC」をサングラス越しに確認し、アクセルを踏む。「おいおい、そんなに飛ばすなよ」。父の声が聞こえた。景色がにじんだ。

(飯野義道、59歳、横浜市金沢区)

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