惣十郎浮世始末 巻之二 第291回 木内昇:吟味方詰所で図面を広げる惣十郎
惣十郎浮世始末 巻之二 第291回 木内昇

吟味方の詰所において、惣十郎は志村の前に桐の文箱から取り出した四枚の図面を広げた。そのうちの一つは、先刻にお粂に描かせたものである。もう一つは、お静のもとから引き揚げた中の一枚であった。さらに、源次郎が描いた部品の図と、梨春がしたためた無尽燈の図も含まれていた。

お粂の盗用疑惑と真実

惣十郎は、お粂を調べた結果、今回彦根の者が申し立てた盗用は存在しなかったと説明した。彦根の者も、今回の訴えを取り下げるのもやむなしとの見解を示している。弓浜の申し立てがそもそも偽言であるため、志村にはそのように説くに留め、素早く図面の詳細へと話を転じた。

図面の内容と無尽燈の仕組み

惣十郎は、当時お粂が造ろうと企図していたのは、リュクトポムプという装置を使った無尽燈であると述べた。これは鉄砲などの武器とは無縁の代物である。崎岡は伝馬町から戻る途中、盗用のことだけ志村様に伝えるよう繰り返し念を押していたが、惣十郎は生返事をした上で、詰所に入るなり四通りの図面を志村に示した。隣で崎岡が怒りに震えていることを察しつつも、そちらには目を遣らずに話を進めた。

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お粂が密かに鉄砲を造り、謀反を起こそうとしたという一件について、念のためさかのぼって検めたところ、武器密造の事実は見当たらなかった。惣十郎は、お粂に描かせた図とお静から得た図を指し示し、両方ともお粂の描いたものであり、一つは入牢以前、もう一枚は現在描かせたものであると説明した。同じ仕組みが描かれていることがわかるだろうと志村に問いかけた。

志村の反応と鍛冶の証言

志村は二枚の図を見比べ、お静の図にある「リュクトポムプ」や「無尽燈」の文字に目を留めた。そして、灯火の装置を造っていただけだったのかと確認した。惣十郎はその通りだと答え、さらに雑物蔵に収められた「武器の部品」とされる品を造った鍛冶が、当時お粂に見せられた図面を思い起こして描いた図を示した。これもお粂が最前描いた図と細部において同じ形をしており、鍛冶にはお粂の描いた図面は一切見せていないと強調した。志村は腕組みをし、眉間を揉んで考え込んだ。

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