菊地祥平の出場は「温情」ではない、アルバルク東京がFE名古屋に快勝
菊地祥平の出場は温情ではない、A東京快勝

「CSには絶対に出る」。チーム一丸となってつかんだ勝利に、現役引退を決めたベテランは、思いを新たにした。

快勝の舞台裏

Bリーグ1部(B1)アルバルク東京(A東京)は22日、トヨタアリーナ東京でファイティングイーグルス名古屋(FE名古屋)に92-71と快勝した。一時は7点差に迫られる場面もあったが、安藤周人が3本の3点シュートを沈めて流れを引き寄せた。突き放した第4クオーター(Q)終盤、今季限りで引退する菊地祥平をコートに立たせることに成功し、ファンを熱狂させた。

「魔の第3Q」を乗り越えて

A東京は序盤からテーブス海とライアン・ロシターを中心にボールを素早く動かし、得点を重ねた。テーブスと交代する大倉颯太や中村浩陸も良い流れを継続させた。この日記録した30アシストのうち、計20をこの4人で稼いだ。相手の空中戦の要で平均リバウンド10.5(リーグ1位)のショーン・オマラが欠場した隙も突き、リバウンドは相手を19上回る42と圧倒。強度の高い守備と緻密な攻撃で前半を48-35で終えた。

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しかし、勢いを継続できない。この日も「魔の第3Q」になりかけた。相手は第2Qからゾーンディフェンスを敷き始めた。A東京は負傷者が復帰しフルメンバーになったばかりで、細かな連係ミスから得点が伸びず、第3Q残り約5分で7点差に迫られた。

「やばいぞ」。点差を広げても突き放せない中、直前に投入された安藤は過去数試合と同じ空気を感じていた。その流れを変えたのは安藤だった。ロシターと中村がパスを回す隙に左コーナーへ移動し、オープンに。中村からパスを受け、鮮やかにリングを射抜いた。これで再び点差は2桁に。直後にもドライブからのレイアップ、再び3点シュートを沈め、前半終了時の13点リードを上回る23点リードで第3Qを終えた。

18日の越谷アルファーズ戦では3点シュート8本を放ち成功ゼロだった安藤は、「(シーズン)60試合もあれば、そういう試合もある。引きずるようでは、甘い」と打ち続けた。翌日は5本中2本、22日は6本中3本を沈め、「切り替えられて良かった」と振り返った。

菊地祥平、コートに立つ

自身の活躍だけではない。安藤は「祥平さんを出すことができた」と満面の笑みを見せた。A東京は第4Q、安藤の3点シュートなどで相手を突き放し、残り3分25秒で23点リード。デイニアス・アドマイティス監督は菊地をコートに送った。引退表明後はベンチ外だったが、この日は前節の行動によりマーカス・フォスターが1試合出場停止などの処分を受けており、菊地がベンチ入りしていた。

「しょうへ~い」。菊地がコートに立つと、TATに7837人の大歓声がこだました。菊地はボールを運ぶ相手に圧力をかけ、相手フリースローの2本目が外れた場合のリバウンドに備え、若い選手と位置争いをした。1リバウンド、2本のシュート試投。ここ数試合と違い、悪い流れを断ち切って相手を突き放したからこそ、ホームのファンに菊地のプレーを目に焼き付ける機会が生まれた。

「きょうが最後かもしれないと、家族が見に来てくれていた。本当に感謝している」。試合後、菊地は笑顔を見せた。プレーオフ、チャンピオンシップ(CS)進出圏内ギリギリの戦いが続く中、菊地が出場できる状況を一丸となってつくってくれたことがうれしかった。リトアニア代表も率いた指揮官は、温情だけで選手をコートに送らない。

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準備を怠らない菊地

菊地は常に準備をしていた。「今のメンバーなら、僕が外れるのが自然だし、それが一番」と分析はできている。それでも、過酷なトレーニングは続けた。「何もしなくなったらチームの士気を下げる。僕の存在意義がなくなる。出られなくても、何も変えない」ことが大切だという。この日も試合終了後に練習をした。取材の間も、額からは汗が流れ落ちた。

試合後の練習は福沢晃平や平岩玄とすることが多い。「誰か出られない状況なら、僕が出ることもある。その準備だけでなく、福沢や平岩と一緒に練習することも、仕事だと思っている」。その姿を知るからこそ、激しいCS争いの中で菊地をコートに送れるのだろう。

CS進出への手応え

この日はA東京らしいプレーを見せるも、シュート以外でボールを失うターンオーバーが15。そこから相手得意の速攻で12失点。シュートタッチが良かった保岡龍斗に17得点されるなど、波に乗った相手選手を止められなかった。アドマイティス監督は「ターンオーバー15は多すぎる。残り4試合、CSに向けもっと精度を高めたい」と、さらなる遂行力を求めた。

課題は残る。それでも菊地は「CSには、絶対に出ると思っている」と強気だ。チームが明確に変わり始めたからだ。フルメンバーになったばかりのA東京は細かな連係ミスが続いている。菊地は「誰かがミスをしたら、他の選手が修正しようと動いていた」とチームのまとまりを感じた。

菊地はCSで千葉ジェッツに大敗した昨季終了後、強いチームとは「『自分が大活躍して負ける』と『自分が活躍できなくてもチームが勝つ』。迷わず後者を選べるチームだ」と話していた。プロは個人成績により年俸が増減し、最悪の場合は仕事を失う。そんな立場であっても、チーム第一であることが必要だと考えていた。A東京は「あと少しでカチッとはまる」。一歩手前と捉えている。

負傷者続出の苦境下では、利己的なプレーが目立つ時期もあった。だがここ数試合は、テーブスを中心にチーム優先の姿勢が明確になっている。菊地は「本当にあと少し。シーズン残り4試合で、二段階ぐらいレベルアップできる」とCS進出への手応えを感じている。

安藤が胸に留める先輩の教え

菊地は10年以上前から、自己犠牲をいとわないプレーを続けている。A東京に移籍してから3年、菊地とプレーし、オフには一緒にキャンプで「バスケも私生活についても、ずっと語り合う」という安藤にとっては「チームのためにということを、厳しく教えてくれた大事な先輩」だ。

安藤が胸に留めていることがある。シュートを決める、守備で相手を止める。それに加えて「プラスアルファで何ができるか、考えないといけない」と教えられた。安藤は40分間、この瞬間に何をするべきなのか、どうやってチームを盛り上げるのかと考えるようになった。尊敬する先輩をCSの決勝に連れて行くということも大きな原動力になっている。「CS決勝まで行けば最低でも10試合ぐらい。一つ一つをかみしめて、祥平さんのために戦いたい」と燃えた。

A東京は今節終了時で、一つ下の順位のレバンガ北海道とのゲーム差は3。25日、ホームで滋賀レイクスに勝ち、北海道が群馬クレインサンダーズに敗れると、CS進出が決まる。