マイル修行客が席を占拠、離島住民の生活路線が危機に
沖縄県の離島・多良間島と宮古島を結ぶ日本航空(JAL)グループの琉球エアーコミューター(RAC)便が、連日予約で満席となる異常事態が続いています。原因は航空会社のマイルを貯める「マイル修行」目的の乗客が急増したためで、島民が通院や子どものスポーツ遠征など日常生活に不可欠な移動に深刻な支障をきたしています。
人口千人島の生命線、飛行機が奪われる
多良間島は宮古島と石垣島の間に位置する人口約1千人の小さな島です。島への交通手段は、RACが運航する宮古―多良間間(所要25分)の1日2往復の航空便と、所要2時間のフェリーのみに限られています。
飛行機は50席のプロペラ機が使用されており、通常の運賃は片道6千円から1万2千円近くかかりますが、島の住民は国と県からの補助により、片道3600円という割安な価格で利用できます。特に波が荒くなる冬季はフェリーの欠航が多く、航空便は島民にとって文字通り「生命線」となっています。
昨年12月から異変、村長が緊急訴え
多良間村の伊良皆光夫村長によると、異変は昨年12月ごろから始まりました。RAC便の予約が次第に困難になり、2026年1月に入ると島民が全く乗れない状況に陥ったのです。
1月26日の夕方、多良間島から宮古島へ向かうRAC便の出発前、機内で伊良皆村長は緊急のアナウンスを行いました。「『修行』のみなさんにお願いがあります。みんなが席を占めているため、島民の通院や子どものスポーツ遠征に影響が出ています。ぜひ考慮していただくようお願いします」と訴えかけたのです。
増便実施も根本解決には至らず
村の要請を受けてRACは急きょ、2月12日から15日と28日などに1日2往復の増便を決定しました。しかし伊良皆村長は「2往復の増便でなくていいから、日数を増やして欲しい」とさらに要望。一時的な増便では根本的な解決にならないと指摘しています。
マイル修行の実態と特典
問題の原因と目されている「マイル修行」とは、航空会社のマイレージプログラムで上位ステータスを獲得するために、短期間で多くのフライトを重ねる行為です。
マイラー関係者への取材によると、上位ステータスを獲得すると以下のような特典が得られます:
- 空港内のラウンジを無料で利用可能
- 搭乗順が優先される
- 前方座席の指定が可能になる
ANAなど他社も距離と運賃額に応じてマイルを付与するシステムを採用しており、比較的短距離で運賃が安い離島路線が「修行」に適しているとみられています。
離島交通の脆弱性が浮き彫りに
この問題は、離島地域の交通手段が限られる中で、外部要因によって住民の基本的な移動権が脅かされる実態を浮き彫りにしました。冬季のフェリー欠航時には航空便が唯一の確実な移動手段となるため、その確保は住民の生活と健康に直結する課題です。
沖縄県内の離島を結ぶ航空ネットワークは、観光客の移動だけでなく、医療アクセス、教育機会、経済活動など多様な面で地域社会を支える重要なインフラとなっています。今回の事態は、その脆弱性を露呈させた形です。
航空会社と行政は、観光需要と住民の生活需要のバランスをどのように取るのか、持続可能な離島交通システムの構築が急務となっています。マイルプログラムの運用見直しや、住民優先枠の設定など、早急な対策が求められる状況が続いています。