南極に生息するアデリーペンギンが、海中でプランクトンの一種である「有殻翼足類」を捕食する様子を、国立極地研究所(東京)などの研究グループが世界で初めて鮮明な映像として捉えることに成功した。この成果は、ペンギンの生態や海洋環境の変化を理解する上で重要な一歩となる。
バイオロギング技術で新たな発見
研究グループは、ペンギンの体に小型ビデオカメラを取り付けて行動を記録する「バイオロギング」という手法を採用。これまでアデリーペンギンの主な餌は魚やオキアミと考えられていたが、翼足類を捕食する姿が確認されたのは初めてのことだ。
捕食された翼足類の特徴
今回捕食が確認された有殻翼足類は、大きさ約20ミリと約5ミリの2種。いずれも浮遊性の軟体動物で、殻を持つことが特徴である。極地研の渡辺日向特任研究員(動物行動学)は、「有殻翼足類は海洋酸性化や水温上昇などの環境変化の影響を受けやすい生物です。個体数が変動すると、ペンギンを含む南極の食物網全体に影響を及ぼす可能性があります。今回の映像は、将来の生態系変化を考える上で極めて重要な成果です」と説明する。
観測の詳細と今後の展望
研究グループは2024年12月から2025年1月にかけて、南極にあるフランスの「デュモン・デュルビル基地」周辺で、アデリーペンギン8羽の背中に小型ビデオカメラを装着し、その行動を詳細に観察した。研究成果をまとめた論文は今年3月、国際学術誌に掲載され、学界からも注目を集めている。
この発見は、南極の生態系における食物連鎖の理解を深めるだけでなく、地球温暖化や海洋酸性化が生態系に与える影響を予測する上でも貴重なデータとなる。研究グループは今後、さらに多くのペンギンにカメラを装着し、長期的な観測を続けることで、環境変化への適応過程を解明したいとしている。



