三重県の若い女性流出が止まらない背景 経済分野の男女格差指数が全国最下位に
三重県の若い女性流出 男女格差指数最下位の背景

地方からの若者の流出が続く中、三重県では特に若い女性の転出が顕著だ。昨年、県は5938人の転出超過を記録し、その約75%が15歳から29歳の年齢層に集中。中でも20代前半の女性の流出が目立っている。県は職場や家庭における性別による役割分担意識が要因の一つと分析するが、県内で暮らす女性たちはどのように感じているのだろうか。さまざまな年代や境遇の当事者に話を聞いた。

経済分野のジェンダー・ギャップ指数で全国最下位

今年発表された「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」の経済分野で、三重県は47位と全国最下位に沈んだ。一見勝之知事は以前から「女性も男性も働きやすい三重県を実現しなければ人口減少は止まらない」と危機感を表明し、ギャップ解消に向けた戦略の策定を進めてきたが、前年の46位からさらに順位を落とした。なぜ低迷が続くのか。背景と改善の糸口を探る。

「選択肢を一つしか持っていなかった」

合同会社アトリエKako代表の竹島愛佳さん(53歳、亀山市在住)は、かつて大手住宅メーカーに勤務していたが、産休を機に退職した。復帰を望んだものの、会社から提示されたのは経験や希望に合わない業務だった。加えて義母の病気も重なり、育児と介護のためにキャリアを手放す決断をした。

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専業主婦として10年間過ごしたことには全く後悔していないが、「家族で他の選択肢を話し合うことなく仕事を辞め、自分で納得して選んだ実感がなかった。社会の普通が私の普通になっていた」と振り返る。ライフステージの変化に左右されない仕事を求め、2011年にグラスアート教室を開業。「良い趣味ですね」と言われることもあったが、真剣に経営に向き合ってきた。

起業などに挑戦する女性を支援するため、2018年にはNPO法人「ウィメンズナレッジ」を設立。講演会やセミナーを開催し、「成功例を知れば、うまくいく想像がつく。いろんな選択肢を可視化して、自分で選んでほしい」と前を向く。

「女性が働かなくても子どもを育てていける環境」

一方、三重大を卒業し、現在東京都内の物流企業で働く松元日菜さん(28歳、鹿児島県出身)は、「家庭に入って子どもを育てるのも女性の一つの選択肢だ」と考える。大学卒業前、同級生の一人が「結婚したら仕事を辞める」と言っていたのを覚えている。都市部に比べ東海圏は物価が安く、生活コストがかからないため、「女性があくせく働かなくても子どもを育てていける環境だ」と感じるという。男性が家庭に入る選択肢もあるが、「周囲に専業主夫がいないのでピンとこない」と話す。

復帰への不安と病児保育の必要性

夫が自動車製造業で働く女性(31歳、鈴鹿市在住)は、第1子出産のタイミングで歯科衛生士のパートを退職。現在第2子が生まれたばかりで、5月から仕事に復帰する予定だ。住宅ローンの返済もあり、「本当は時短正社員を目指したい」という。しかし、求人を見ると、子どもが体調不良の際に病児保育を利用するか、家族の協力を求める条件が多く、「正社員なのにまた休んでいると思われないか」と気がかりだ。パートで復帰する方が精神的に楽だと感じている。夫は家事を手伝ってくれるが、育児に疲れて実家を頼ることもある。「働くのが息抜き」にもなるといい、病児保育機能を備えた保育所の増加を訴える。

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根強い「男性は大黒柱」意識

ジェンダーと政治に詳しい三重大の岩本美砂子名誉教授(69歳)は、三重のジェンダー・ギャップについて、製造業が盛んで男性を「一家の大黒柱」とする意識が根強いことが、フルタイムで働く女性の少なさにつながっていると分析する。民間企業では「男性だけでうまくやれてきた成功体験」があり、改善への動機が弱いという。

また、女性が出産後に専業主婦になったり非正規で働いたりする背景には、長時間労働を前提とする男性の働き方があると指摘。「正社員と育児・介護が両立しない社会構造」を改善する必要性を強調する。例えばオランダでは男女ともに正社員のままフルタイムより短い時間で働く形態が定着しており、「日本でも男性の働き方が人間的なものになれば、女性の就業者も増えるだろう」と述べた。