化石燃料依存の現状と食料への連鎖
京都大学教授の藤原辰史氏は、米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃を契機とした中東危機が、食料価格に与える影響について警鐘を鳴らす。ホルムズ海峡の封鎖により石油や天然ガスの供給が滞ると、化学肥料や農薬の製造、農業用ハウスの暖房、食料の輸送、プラスチック包装など、現代の食料システム全体が打撃を受ける。藤原氏は「私たちは化石燃料なしでは食べ物を食べられない構造に絡め取られている」と指摘し、この依存からの脱却が急務だと強調する。
過去の転換期と現状の課題
藤原氏は、化石燃料依存からの脱却が過去半世紀にわたり繰り返し叫ばれてきたにもかかわらず、日本社会は根本的な問い直しを始めていないと述べる。1973年の第4次中東戦争や1979年のイラン革命による2度のオイルショック、さらには相次ぐ公害問題があったにもかかわらず、依存体質は変わらなかった。特に、化学肥料の原料である尿素やアンモニアの約3割が通過するホルムズ海峡の重要性を挙げ、2026年4月時点で尿素の国際価格が攻撃前に比べ1.8倍に高騰したことを例示する。
有機農業への注目と今後の方向性
オイルショック時には有機農業が注目されたが、藤原氏は「正常性バイアス」が根治を遠ざけてきたと批判する。日本は化学肥料の原料をほぼ輸入に依存しており、ロシアのウクライナ侵攻後の価格高騰に続き、中東危機でさらなる急騰が発生。藤原氏は、化石燃料に頼らない農業システムへの転換、具体的には有機農業や地域循環型の食料生産への移行が必要だと訴える。しかし、現状では「問い直しは始まってさえいない」と厳しい見方を示す。
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