対馬の希少植物41種、シカ・イノシシの獣害で絶滅の危機に直面
長崎県・対馬固有の植物など希少な種を紹介した冊子「対馬の希少な植物~対馬の自然を守るために~」が作成されました。この冊子には、シカやイノシシによる獣害の影響で絶滅のおそれがある植物など、計41種が掲載されています。対馬の豊かな自然を守り、次の世代に伝えるための取り組みとして注目されています。
研究者と元協働隊員が協力、詳細な調査を実施
冊子を作成したのは、対馬植物研究会代表で富山県立大学教養教育センター准教授の鈴木浩司さん(56歳、富山県射水市)と、対馬市の元島おこし協働隊員で生物多様性保全を担当した対馬観光物産協会上対馬事務所の掛澤明弘さん(39歳、長崎県対馬市)です。両者はともに京都大学大学院理学研究科で学び、植物分類学を専門としており、長年にわたり対馬の植物生態を研究してきました。
対馬には固有種を含め、約1200~1300種の植物が自生しているとされています。しかし、近年はシカやイノシシによる獣害が深刻化しており、植物が食い荒らされるだけでなく、餌を探して地面を掘る行為により、豪雨のたびに土砂が流出し、生育地が破壊されている状況です。例えば、かつては確認されていたハナナズナなどの種が、現在では見られなくなっている事例も報告されています。
冊子作成の背景と目的:自然保護への啓発を目指す
こうした現状を受け、鈴木さんと掛澤さんは「対馬の自然の実態を知ってもらい、保護につなげたい」という思いから、冊子の作成を思い立ちました。自然保護関係の民間財団から助成金を受け、2011年から現地調査を開始。住民の協力も得ながら内容をまとめ、計2500部を発行しました。冊子はA5判で29ページに及び、41種の開花期や島内の分布図、学名(科名)、写真、詳細な説明文などを掲載しています。
昨年12月には、対馬市で開催された「対馬未来フォーラム2025」で、来場者に100部を配布し、固有種の危機的な状況をポスター展示で周知する活動も行いました。今後は、公民館や博物館などに冊子を設置することを検討しており、より多くの人々に情報を届ける計画です。
研究者の声:貴重な植物を守り、次世代へ継承したい
調査のためにほぼ毎年対馬を訪れている鈴木浩司准教授は、「対馬でしか見られない貴重な植物が姿を消している現状に強い危機感を抱いています。この状況に関心を持ってもらい、みんなで守って次の世代に伝えたいと考えています。冊子がその一助になれば幸いです」と語っています。掛澤明弘さんも、地域住民と連携しながら、持続可能な自然保護の取り組みを推進していく意向を示しています。
対馬の希少植物の保護は、単なる生態系の保全だけでなく、地域の文化や歴史を守る上でも重要な課題です。冊子の作成を通じて、獣害対策や環境教育の必要性が改めて浮き彫りになり、今後の活動への期待が高まっています。