民泊が地域社会に深刻なストレス…騒音・犯罪拠点化で住民不安増大
民泊が地域社会に深刻なストレス…騒音・犯罪拠点化

民泊が地域社会に深刻なストレス…騒音・犯罪拠点化で住民不安増大

騒音やごみ出しを巡って「民泊」と地域住民とのトラブルが相次ぐ中、東京都内の施設が先月、住宅宿泊事業法(民泊新法)違反の疑いで全国で初めて摘発された。昨年、過去最多となった4268万人のインバウンド(訪日客)需要を背景に右肩上がりに増加する民泊だが、犯罪拠点に使われるケースもあり、地域社会との共存が大きな課題になっている。

住宅宿泊事業法(民泊新法)とは

住宅宿泊事業法(民泊新法)は、インバウンドの宿泊ニーズや空き家対策として民泊が注目される中、必要な消火設備などを欠く違法民泊が横行したことなどから、営業に一定のルールを設けるために2018年に施行された。民泊の営業を年間180日以内に規制するほか、自治体が条例で独自の規制を上乗せすることができる。

土日限定のエリアで平日も営業、深夜に眠れないほどの騒音

「窓を開けて夜中の2時、3時まで騒いでいて、うるさかった」。今回摘発された、荒川区にある一軒家の民泊の近くに住む60代の女性は、騒音に悩まされた日々をそう振り返る。同区では民泊の営業を土日に限っていたが、この施設は平日も営業。区に対しては、土日しか営業していないと虚偽報告をしたなどとして、警視庁保安課は民泊新法違反の疑いで、運営会社を経営する中国籍の男女2人を書類送検した。女性は平日深夜の騒音によって「仕事で朝5時に起きないといけないのに眠れなかった。どこの民泊にもある問題なんだろうけど、マナーぐらい守って」と訴える。

全国市区町村で最多の新宿区に寄せられる大量の苦情

観光庁によると、稼働中の民泊は2018年に全国で1万カ所ほどだったが、今年1月15日時点で3万8000カ所を突破。都内が約1万6000カ所を占め、中でも新宿区は全国の市区町村で最多の約3600カ所を抱える。新宿区保健所によると、新型コロナによる入国制限などの水際措置が撤廃され、訪日客が一気に増えた2023年から苦情が目立って増加。昨年4〜12月は1000件超の苦情が寄せられた。たばこのポイ捨てや放置されたごみからの悪臭、夜中に施設と間違えて近隣住宅の玄関ドアを無理やり開けようとしたケースもあった。

同保健所衛生課の浅野祐介課長は「火事や感染症などが発生した場合、大変なことになる」と危機感を表す。届け出だけで民泊を運営でき、仲介サイトで違法施設が堂々と掲載されている現状に「しっかりとした専門業者が民泊をするべきだ。政府は2030年に訪日客6000万人を目標にするが、この状態のままで目指していいのか」と疑問を呈する。

トラブルが起きる施設のほぼ100%が「家主不在型」

犯罪の拠点に使われた例もある。警視庁が昨年5月に摘発した特殊詐欺グループは東京や愛知などの民泊で詐欺電話をかけていた。また、覚醒剤密輸事件で拠点に使われた大田区の民泊からは覚醒剤97.7キロ(末端価格約56億7000万円相当)が見つかったほか、暴力団員が都内30カ所以上の民泊を大麻の密売拠点にしていた事件もある。

民泊問題に詳しい立教大観光学部の東徹教授は、「無人で鍵を貸すだけの家主不在型の施設は管理が徹底されず、犯罪拠点としても使われやすい」と指摘。トラブルが起きる施設のほぼ100%が不在型だといい「安心して静かに暮らせるはずの住宅地に不特定の人が頻繁に出入りすれば、誰だって怖い。その不安感が民泊問題の底流にある」と話す。

訪日客6000万人という政府目標と同調するように民泊は今後も増加すると予想しつつ「国策のしわ寄せを受けるのが地域住民であってはならない。地域の実情に応じた総量規制など自治体の裁量を大きくするよう住宅宿泊事業法を見直すべきだ」としている。