EV車載電池のリサイクル競争が本格化 住友金属鉱山が希少金属回収で新工場稼働へ
EV電池リサイクル競争 住友金属鉱山が希少金属回収で新工場稼働 (17.02.2026)

EV普及で希少金属リサイクルが急務に 住友金属鉱山が新工場で本格稼働へ

電気自動車(EV)の普及に伴い、車載電池の需要が急拡大する中、希少金属のリサイクルが重要な課題となっている。非鉄金属大手の住友金属鉱山は、使用済み車載電池からレアメタル(希少金属)を回収し、電池向け素材に加工して供給する事業を強化している。欧州を中心に使用済み電池の再資源化を義務づける制度が始まっており、日本企業の対応が急がれている状況だ。

製錬技術を駆使した高度なリサイクルプロセス

同社金属事業本部の真野匠マネージャーによると、使用済み電池にはニッケルや銅、リチウム、コバルトなどの鉱物が含まれており、これらを効率的に回収する技術が確立されているという。具体的には、電池を破砕して粉状にした「ブラックマス」から有用な金属だけを抽出。ニッケルや銅などを含む合金を取り出し、薬液を使って純度を高める工程を経て、高純度のニッケルを製造している。

「このニッケルは車載用電池のエネルギーをためる正極材向けに加工します。使用済み電池から新しい電池を生み出すのが、当社のリサイクル事業の特徴です」と真野氏は説明する。

欧州規制を上回る回収率と実証済みの性能

欧州では2023年に「欧州電池規則」がEU理事会で採択され、使用済み電池のリサイクルをメーカーなどに義務づけている。この規則が2031年に達成を求めるニッケルの回収率は95%だが、住友金属鉱山の回収率は既にこれを上回っているという。

リサイクルで得られたニッケルは、正極材に加工され、鉱石由来のニッケルと変わらない性能を発揮することが確認されている。大手車載電池メーカーのプライムアースEVエナジー(現・トヨタバッテリー)による電池性能評価では「使用可能である」と実証済みだ。

新工場稼働で処理能力を大幅拡大

欧州電池規則では、2031年以降に販売されるEVの電池にリサイクル金属を使用することを義務づけており、ニッケルの場合はリサイクル由来を6%使用しなければならない。このため、リサイクル金属の供給は今後のEV事業推進にとって極めて重要となっている。

真野氏は「各国で使用済み電池に含まれるレアメタルの囲い込みが進んでいます。2023年の米マッキンゼーの調査では、使用済み電池は2040年には世界で2050万トンに上るという予測もあります」と指摘する。

こうした状況を受け、同社は2026年6月に使用済み電池から新しい電池にニッケルを供給するための新工場を稼働させる計画だ。この工場ではコバルトも回収できるようになり、リサイクルの処理能力は使用済み電池換算で年間約1万トンに拡大する見込み。

安定供給の基盤構築へサプライチェーン強化

ニッケルやコバルトは、社会に必要な製品を生産する上で欠かせない重要鉱物だ。日本の自動車メーカーが今後EVを展開していく上で、三元系リチウムイオン電池に必要なニッケルなどの安定的供給は、電池製造の基盤といえる。

「基盤を守るための一翼を担いたいと思います」と真野氏は語る。

今後の取り組みとして、リサイクルに使う原料を調達するサプライチェーン(供給網)の強化が課題となる。同社は全国に拠点を置くリサイクルの大手事業者とパートナーシップ協定を締結しており、これらの事業者は環境に配慮しながら使用済み車載電池を無害化する技術を持っている。パートナーシップ協定の締結先は拡大していく方針で、海外のリサイクル事業者とも連携し、原料調達を強化していく構えだ。

真野匠氏は1992年に住友金属鉱山に入社。2012年から研究所で電池リサイクルの開発に携わり、2019年から金属事業本部事業室で電池リサイクルの事業化戦略を考案している。半導体材料の開発に携わった経歴も持つ専門家として、希少金属リサイクル事業の推進役を担っている。