街の中を歩いていると、駅前広場や公園、ビルのテラス、遊歩道などに、さまざまな動物の彫刻が置かれているのを目にすることがある。これらは単に景観を彩るだけでなく、歴史上の人物の銅像のように、それぞれに深い物語を秘めている。何気なく通り過ぎてしまいがちだが、時には足を止めて、その動物が生きた時代や姿に想像を膨らませてみてはいかがだろうか。
捨て犬からセラピードッグへ 「名犬チロリ記念碑」
東京・築地川銀座公園の一角に立つ「名犬チロリ記念碑」は、等身大のミックス犬チロリとその5匹の子犬をかたどった像である。チロリは1992年、発見されたときは片耳が折れ、後ろ足の一本は変形し、見るも無惨な姿だった。子犬たちは新しい飼い主に引き取られたが、チロリは殺処分の直前に国際セラピードッグ協会代表の大木トオル氏に救われた。ある日、病気の犬に寄り添うチロリの姿を見た大木氏は、その才能を見抜き、訓練を開始。1996年、チロリは日本で初めてのセラピードッグとなった。以来、医療や福祉の現場で長く活躍したが、2006年に推定16歳で永眠した。像はその死から1年後、チロリがよく訪れていた同公園に建立され、動物の殺処分廃止を訴え続けている。
戦後初の来日ゾウ 「ゾウのはな子」
武蔵野市の井の頭自然文化園で長年愛されたアジアゾウのはな子は、1949年にタイから来日した戦後初のゾウである。当初は上野動物園にいたが、1954年に自然文化園へ移り、その後62年間をここで過ごし、69歳でこの世を去った。当時の国内最高齢記録を持ち、その功績を称え、亡き翌年の2017年にJR吉祥寺駅北口駅前広場に像が設置された。高さ約1.5メートル、全長約2.5メートルの像は、元気だったころのはな子を再現。右前脚を上げて挨拶するポーズは、はな子の象徴的な姿であり、今では待ち合わせスポットとして親しまれている。
ダービー馬を輩出した名種牡馬 「トウルヌソル像」
目黒通り沿いの元競馬場交差点脇にある「目黒競馬場跡」の記念碑の上には、馬の像が鎮座している。英国の競走馬として活躍したトウルヌソル号で、1927年に種牡馬として来日。その後、6頭のダービー馬を輩出し、日本産サラブレッドの基礎を築いた名馬である。目黒競馬場は1907年に開設され、1933年に現在の東京競馬場へ移転するまで、この地で多くの人々を熱狂させた。地域の歴史を後世に伝えたいという思いから、1983年に記念碑が建立された。今では住宅が密集するこの街にも、かつて1周約1600メートルの競馬場があった証しとして、カーブする路地がその名残をとどめている。



