外国人住民との共生を考えるためのオンライン研修会が、地方議員を対象に開催されました。この研修会には、埼玉県南部に住むクルド人の男性や、東京都内で在住外国人との交流に積極的に取り組む議員らが参加し、生活ルールや文化の違いに起因する摩擦や、深刻化するヘイトスピーチの問題について議論が交わされました。共生社会の実現に向けて、地域レベルで可能な有効な方策を模索する場となりました。
研修会の概要と参加者の声
この研修会は、東京の出版社「自治体研究社」によって5月に開かれ、全国各地から約60人の地方議員が参加しました。参加者からは、排外主義的な政策を掲げる議員が各地で当選していることへの懸念や、「外国人が集まって話しているだけで不安を感じる住民がいる。摩擦を防ぐための対策を考えたい」といった奈良県の市議の声が上がりました。また、「学校での日本語指導に苦労しており、10カ国以上の生徒を1~2人の教師で指導している」という山口県議の課題も共有されました。
クルド人代表・ワッカス氏の訴え
埼玉県のクルド人団体「日本クルド文化協会」の代表であるチョーラク・ワッカス氏は、自身の団体の歩みを振り返りながら、「国を持たない私たちのアイデンティティーは、宗教よりもクルド人であること。日本では清掃活動や震災ボランティア、クルド人の祭りを開催し、行政や警察との関係構築に努めてきた。しかし、その活動が目立ち、ヘイトスピーチの標的となっている」と語りました。ワッカス氏によると、クルド人は1990年代初頭から迫害を逃れて来日し始めましたが、日本で難民認定を受けたのはたった1人だけです。難民と認められない中、2023年ごろからヘイトスピーチが増加していると嘆きました。また、ごみ出しのルールや住民税、年金など日本の制度について、「自分の住んでいた国にはなく、知らないことが非常に多い」と指摘し、イラストや多言語で分かりやすく伝える行政ツールの必要性を訴えました。
新宿区議・沢田氏の取り組み
東京都新宿区の沢田あゆみ区議(共産)は、区内の外国人住民が約5万人で人口の14%を占めており、地域ボランティアが長年にわたり子どもたちの学習支援を行ってきたと紹介しました。区の2023年度実態調査によると、外国人住民が最も望むことは「あいさつなど親しく声をかけてほしい」で、次いで「偏見や差別をなくしてほしい」「地域のイベントなどに誘ってほしい」が続きました。沢田氏は「ワッカス氏の言う通り、対話が重要だ」と述べました。また、区が本年度、国民健康保険に新規加入する外国人に保険料1年分の一括前納を求める制度を導入したことについて、「差別をあおるものだ。収納率が低いというが、国によって制度が分からない人がいることも明らかだ」と批判し、日本語学校関係者や留学生との懇談を通じて課題を見つける努力を続けていると話しました。
専門家・芝田氏の指摘
城西大学非常勤講師(人権論)の芝田英昭氏は、1993年から始まった技能実習制度について言及し、法務省幹部が1960年代に自著で記した「(外国人は)煮て食おうと焼いて食おうと自由」という言葉が「今も政策に踏襲されている」と指摘しました。批判の強い技能実習制度に代わり、来年4月からは人材確保を目的とした「育成就労制度」が導入されます。芝田氏は「広い意味での移民政策でありながら、政府がそれを認めず正式に議論しないことで、外国人の人権を無視してきた。グローバル化が進む中、地域社会で外国人を排除するのはおかしい。多文化共生ではなく『多文化共創』、つまり外国人は地域を共に創る隣人であるという意識を持つべきだ」と強調しました。
この研修会は、外国人と共に暮らす社会の実現に向けて、地域レベルでの具体的な行動と意識改革の重要性を改めて浮き彫りにしました。



