水俣病公式確認70年、被害の全容はなお不明
大規模な環境汚染をもたらし、「MINAMATA」として国際的に知られる水俣病は、2026年5月1日で公式確認から70年を迎えた。しかし、どこにどれだけの被害者がいるのか、その全容を明らかにする調査は行われていない。現在も約1500人の未認定患者が裁判で救済を求めているが、解決の道のりは遠い。
環境相が被害者団体と懇談、調査方法で溝
水俣病の「なぜ」と今を解説する特集の一環として、4月30日、熊本県水俣市を訪れた石原宏高環境相は、被害者団体との懇談に臨んだ。団体側は、被害の実態を把握するための不知火海沿岸の大規模な調査などを求める要望書を提出。一方、環境省が今年度に予定する健康調査については、大規模にできないなどとして中止を要求した。
2009年に施行された水俣病被害者救済法(特措法)は、沿岸住民の健康調査の「積極的かつ速やか」な実施を国に求めている。環境省は「健康不安の解消」を目的として、「千人規模」の調査を年度内に始める予定だ。具体的には、脳磁計(MEG)と磁気共鳴断層撮影(MRI)を用いて、水俣病の原因となったメチル水銀が脳に与えた影響を調べるとしている。しかし、この手法には精度に難があると指摘されており、救済や被害の実態把握が本来の目的ではないことから、被害者団体が求める調査とは隔たりが大きい。団体側からは、「『健康調査』の名目で、国民を欺瞞する方法でやろうとしている」と強い批判が上がった。
石原環境相、現在の方法で調査を進める方針
石原環境相は懇談後、調査について「団体の皆様と意見が合わない所はあるが、MEGやMRIを使うことをぜひご理解頂きたい」と述べ、省が現在準備している方法で進めていく方針を示した。
懇談ではまた、裁判などで被害の訴えが相次ぐ状況を受け、1995年の村山内閣時の施策や特措法に続く、未認定患者を救済する第3の「政治解決」を求める声が団体側から上がった。これに対し石原氏は、「重い過去の決断がある。なかなか再度の救済にはそれなりの理由付けがないと国民の理解を得られない」と否定的な見解を述べた。
「公害の原点」と言われる水俣病の70年。被害者の救済と真相解明はなお道半ばであり、今後の国の対応が問われている。



