昭和元年から今年で満100年になることに合わせ、戦没者の遺児らでつくる奈良県遺族会が、戦中戦後の記憶を継承する活動に力を入れている。5月末に開催された語り部活動推進大会では、戦争体験の朗読劇や講話が実施され、参加者は真剣に耳を傾けた。今後は各市町村で語り部活動の参加者を募るほか、戦争体験者の証言や県内の戦争遺構を動画撮影することも予定されている。
語り部大会の様子
5月30日に奈良市の県護国神社で開かれた大会は、各都道府県の遺族団体が一斉に実施する語り部イベントの一環。会員やその家族約70人が集まり、戦争の悲惨さと平和の尊さを改めて認識した。
体験者の講話
体験者として講話を行った宇陀市の久治米立子さん(83歳)は、2歳の頃に父・松岡清一さんをフィリピン・レイテ島で亡くした経緯を語った。生活は貧しかったが、母・千代野さんは慣れない農作業をしながら女手一つで久治米さんと弟を高校まで進学させた。久治米さんきょうだいは2012年、父の戦没地であるレイテ島での慰霊祭に初めて参加。慰霊碑の前で、母の偉大さや孫ができたことなどを報告したという。久治米さんは戦後の苦労や母への感謝をつづった手記を読み上げた後、「戦争のない世の中になってほしい。孫の世代にも体験を伝えたい」と訴えた。会場には親族7人も参加しており、孫の坂本繭子さん(10歳)は「戦争は怖いけれど、もっと聞いてみたいと思った」と興味を示していた。
朗読劇の初披露
講話に先立ち行われた朗読劇「出征兵士を見送る家族の物語」は、同会として初めての試み。佐賀県遺族会で作られた台本を基に約1か月前から練習を重ね、ナレーターを含めた会員6人が出演。戦時中、召集令状を受け取った長男を戦地に送り出した家族の悲しみを描き、会員の熱演に参加者は聴き入った。
今後の取り組み
奈良県遺族会では、昨年の戦後80年に合わせて会員らの手記をまとめた記念誌を作成。今後の活動を通し、語り部として参加できる戦争体験者の子どもや孫世代を増やしたい考えで、同会の宮本謙二・青年部長(70歳)は「若い世代でも、戦争体験の継承にできることはある。子どもたちにも伝える工夫をしていきたい」と語っている。



