世界抹茶ブームで輸出額過去最高、国も栽培後押し…煎茶価格高騰で「茶離れ」懸念
世界抹茶ブームで輸出額過去最高、国も栽培後押し

世界中で抹茶人気が止まらない。海外での需要が高まり、抹茶を含む緑茶の輸出額は2025年に721億円と過去最高を記録した。国内でも抹茶を提供するカフェは外国人観光客に盛況で、茶農家は抹茶の原料になるてん茶の栽培に力を入れる。茶全体の需要に供給が追いつかず、家庭で親しまれている煎茶の価格が高騰しており、「茶離れ」を懸念する声も上がっている。

SNS映えする抹茶、外国人観光客に大人気

4月下旬、東京・表参道の抹茶専門店「THE MATCH TOKYO」は外国人観光客らで混雑していた。目当ては店員が目の前でたてる高品質な抹茶。牛乳と混ぜた「抹茶ラテ」は苦みが和らいで飲みやすく、特に人気の商品だ。カナダからの観光客(32)はラテにココナツアイスクリームをのせたフロートを注文し、「なめらかでとてもおいしい。健康にもいいのよ」と笑顔を見せた。

抹茶はカテキンやビタミンEなどの栄養素を摂取できることから健康的な飲み物として世界中で人気だ。鮮やかな緑色がSNSで見栄えが良く、投稿が相次いでいる影響も大きい。2018年にオープンした同店では客の7割を外国人が占める。ブームに乗り、国内に6店舗のほか、東南アジアやカナダなど海外にも54店舗を展開している。長田昌宏社長(57)は「健康志向の若者を中心に、酒やコーヒーよりも抹茶が良いと選ばれている」と話す。

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国もてん茶栽培への転換を後押し

財務省の統計などによると、2025年の抹茶を含む緑茶の輸出量は約70年ぶりに1万トンを超えた。輸出先は米国が最多で3割以上を占め、台湾、ドイツなどアジアや欧州にも広がりをみせている。国は好機をとらえようと、煎茶から抹茶の原料となる「てん茶」へと栽培の切り替えを後押ししている。煎茶とてん茶は同じ茶畑で栽培されるが、てん茶は収穫前にシートなどをかけて日光を遮る。農林水産省はこのシートやてん茶を加工する機械の購入に補助金を出している。同省の担当者は「抹茶は輸出品のトップランナー。世界の市場を獲得するチャンスに挑戦する人を支援したい」と話す。

茶どころとして知られる静岡市葵区の茶農家でつくる「足久保ティーワークス茶農業協同組合」は昨年、国などの補助金を活用し総事業費2億円をかけて機械や資材を導入。計17ヘクタールある茶畑のうち、これまで1割にも満たなかったてん茶の栽培を7割まで増やした。昨年のてん茶の価格は2024年の約6倍だったといい、松永哲也組合長(53)は「驚くような値段がつき、やる気につながった」と手応えを語る。

煎茶の価格高騰と「茶離れ」懸念

ブームの一方で、急激に高まる茶の需要に国内の生産が追いついていない。農水省によると、茶農家の担い手不足や高齢化によって茶の生産量は2025年に7万5100トンと20年間で25%減少している。新しく茶畑をつくっても収穫できるまで5年ほどかかるため、すぐに生産量を増やすことは難しい。さらに農家のてん茶への生産転換が重なって煎茶が不足し、価格が高騰している。茶の生産量全国1位の鹿児島県では4月の新茶の初取引会で平均入札価格が前年比1.6倍の6573円だった。

こうした状況を受け、ペットボトル入りの緑茶飲料にも値上げの影響が出ている。伊藤園とコカ・コーラボトラーズジャパンは3月、600~650ミリリットル入りを1割程度値上げした。業界団体の日本茶業中央会の鈴木貞美専務理事(64)は「てん茶だけに生産が偏れば、煎茶の価格の高騰が続き『お茶離れ』が起きてしまうかもしれない。煎茶とてん茶の生産のバランスを取っていく必要がある」と指摘している。

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中国での模倣品や品質向上が課題

模倣品への対策や抹茶の品質向上も課題だ。中国では京都府の「宇治抹茶」という文字を表示した模倣品が流通しているという。府農産課の担当者は「宇治抹茶のブランドが傷つけられてしまう。中国側に対策の強化を求めていきたい」と話す。中国は抹茶ブームを背景に生産量を急速に増やしており、京都府茶業研究所の堤保三所長(59)は「菓子などに使われる加工用の抹茶であれば、中国産は脅威になりうる」と警戒する。中国産の一部には香りや風味が日本産と比べ遜色ないものもあるといい、堤所長は「日本の抹茶の品質をさらに高め、差別化を図る必要がある」と話していた。