愛知県豊橋市出身のホラー作家、藤白圭さんが足しげく通うお好み焼き店「伊勢路・本店」(同市駅前大通1)は、創作意欲と食欲を同時に刺激する特別な場所だ。2026年6月8日、気温が30度近くまで上昇した昼下がり、涼しい店内で藤白さんと共に熱々の好物を味わいながら、作家への道のりや創作への思いを聞いた。
創作の原点は「モダン焼き・ミックス2種」
「気が付いたらこれにたどり着いていた」と藤白さんが迷わず選んだのは、中華麺入りの「モダン焼き・ミックス2種」(税抜き千円)。2種類から選べる具材はいつも「豚とイカ」だといい、「肉と魚介のタンパク質、キャベツの食物繊維、麺と生地の炭水化物のバランスが健康的でしょう」と理由を語る。
厨房からジュウジュウと音が聞こえた後、しばらくして南部鉄器製のプレートに乗った大きなモダン焼きが運ばれてきた。マヨネーズが溶けてツヤツヤと輝く生地に麺と具材を包んで食べると、山盛りのキャベツのおかげか、見た目に反してあっさりとした味わいで箸が進む。
創業57年の老舗「伊勢路」
伊勢路は創業57年目を迎える。店主の樋渡喜久代さん(58)は一昨年、父の堀米治さんの死後に経営を継いだ。「ワンランク上のお好み焼き屋」を目指し、本店のほか広小路店や西駅店(いずれも閉店)でもこだわりの味を提供してきた。
藤白さんは「中学時代は夏期講習後に広小路店に通っていた」と懐かしむ。今でも頻繁に訪れ、最後に食べたのは「2週間前」というほどのリピーターだ。
ホラー作家としての歩み
母親や祖母の影響で幼少期からホラーに親しんできた藤白さんが小説を書き始めたのは約10年前。長編で応募したコンクールで表彰を逃し、「文章の取捨選択を考える訓練」として140字制限のX(旧ツイッター)で短編ホラーを投稿し始めると、「短ホラの名手」として話題に。2018年に短編集『意味が分かると怖い話』(河出書房新社)でデビューし、累計販売43万部の人気シリーズとなった。地元に伝わる都市伝説も創作の一助となっている。
現在では豊橋市内の小学校から講演を依頼されることもあり、「今の時代にこそ映像より文章で想像力をかき立ててほしい」と児童らに呼びかけている。
豊橋への思いと未来への展望
「豊橋はクリエーターが多く生まれる街。これからもここを拠点に、小説をメインにしたエンタメを作り出していくことが夢」と藤白さんはモダン焼きを食べる手を止め、熱っぽく語った。
店舗情報
- 伊勢路・本店
- 営業時間:午前11時~午後5時(ラストオーダー午後4時半)
- 定休日:火・水曜
- 電話予約可:0532(53)7012
- 場所:豊橋駅前の水上ビル1階



