足元の芸術が街を彩る マンホール蓋のデザイン進化
近年、街中で目にするマンホール蓋が、単なる機能的なものから芸術作品へと進化している。光を反射したり立体的に見えたりする凝ったデザインが各地で登場し、通行人の目を楽しませている。
栃木県小山市の陶器のような美しさ
栃木県小山市のまちの駅「思季彩館」には、先月上旬、陶器のように滑らかで透明感のある質感のマンホール蓋が設置された。デザインには、ブランド豚「おとん」や伝統的な絹織物である結城紬など、同市の特産品12点が描かれている。
凹凸をつけた枠に色鮮やかな樹脂塗料を流し込み、桜の花びらや農作物の実は色の濃淡で奥行きを表現。同市下水道施設課の上野紫音さんは「全国のマンホール愛好家たちに足を運んでもらい、市の魅力を発信できれば」と期待を寄せている。
デザインの歴史的変遷
マンホール蓋のデザインは時代とともに変化してきた。日本グラウンドマンホール工業会事務局長の大石直豪さんによると、かつては幾何学模様が主流だったが、1980年代に国が下水道の普及やイメージアップを図ると、美しい自然を想起させる花鳥風月の柄が登場。
1990年代には祭りやスポーツなど地域色の強いデザインが広がり、2000年代には当時ブームだったゆるキャラも描かれた。令和時代に入り、現地を訪れてこそ味わえるデザインの魅力がさらに高まっている。
東京都北区の「幸せになれる」蓋
東京都北区のJR赤羽駅北改札口から徒歩1分のガード下では、頬を押さえた男性のイラストとともに「踏むと幸せになれる」との吹き出しが添えられたシュールなマンホール蓋が存在感を放つ。
このデザインは、赤羽での暮らしを描いた漫画の著者である清野とおるさんが手がけ、2020年に設置された。ユニークなメッセージが通行人の注目を集めている。
広島県尾道市のトリックアート
広島県尾道市の生口島にある「しおまち商店街」には2022年、マンホール蓋の中の世界をのぞいているかのようなトリックアートが登場した。
四角い蓋をドアに見立て、扉を開いた先には商店街の街並みが見えるように描かれており、まるで別世界への入り口のような感覚を楽しめるデザインとなっている。
地域の魅力を伝える新たな文化
これらの芸術的マンホール蓋は、単なる街のインフラではなく、地域の歴史や文化、特産品を表現するメディアとしての役割を果たしつつある。デザインの多様化は、地域活性化や観光資源としての可能性も秘めており、今後も進化が期待される。
足元に広がる小さな芸術は、日常の中にささやかな驚きと発見をもたらし、街歩きをより豊かな体験に変えている。