名古屋市港区の水田地帯、経営難打開へ米粉に懸ける 新たな価値はグルテンフリー市場にあり
名古屋市港区の水田地帯、米粉で経営難打開へ

大都市の一角に広大な水田地帯が残る名古屋市港区南陽地区で、米粉用の品種を生産する試みが始まった。2025年度に栽培をスタートし、600キロ余りを収穫できた。農業用資材の高騰などを受けて経営が苦しくなる中、消費者の新たな需要を開拓できるか、注目される。

南陽地区の歴史と現状

南陽地区は名古屋市港区の西部に位置し、江戸時代の新田干拓で農地として開発された。1955年に旧南陽町から名古屋市に合併。59年の伊勢湾台風では一帯が水没するなど壊滅的な被害を受けた。港区によると、現在も市内最大の農業地域で300ヘクタールを超える水田が広がり、ブランド米の栽培などが続けられている。

米粉用品種「もみゆたか」への挑戦

この品種は「もみゆたか」。25日に同地区のJAなごや南陽町支店で活用例などを報告するシンポジウムがあり、この米を使ったパンが試食用に提供された。パンの製造に協力した「花酵母factory」(愛知県碧南市)の金子優平さん(35)によると、通常、米粉のパンは生地をふわっとした仕上がりにするのが難しい。もみゆたかは、他の品種と比べ「よく膨らみ、ポテンシャルが高い」と評価した。花から採取した天然酵母を用いることで甘い香りや味も出た。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

名古屋駅まで9キロほどの南陽地区ではかねて主食米の生産が中心。食育の推進を目的に、学校給食に提供したり、稲作体験をしたり、都市農業を支えている。ただ、農業機械などを個々の農家が導入するとコストが大きくかかる。農地の9割以上で土地所有者に代わり、「JA名古屋ファーム」が耕作している。

グルテンフリー市場への期待

今後も都市農業を維持し続けるため、米の付加価値を高める道を模索。アレルギーの増加や健康志向でグルテンフリー製品の市場が広がっていることから米粉に着目した。もみゆたかは、減反政策の一環で飼料米として普及が進められていたが、米が硬く、実は製粉に適していることが判明。名城大の教授やパン専門店の経営者らと米粉用に研究を重ねている。

この日、会場では東海農政局の福井逸人次長が、米粉用米の需要が09年度の5千トンから25年度には6万トン(見込み)に急増していると説明。国が交付金制度で生産を支援していることも伝えた。JAなごや地域振興部の平野利悟副部長は「まだ実験の段階だが、国の減反政策が続くことを考えると、米粉用米で農業者の収入の間口が広がることにつながればよい」と期待を込めた。

米粉用米の可能性と課題

シンポジウムに参加した識者は、米粉用米は温暖化の影響を受けにくく、流通が軌道に乗れば、農家にとってメリットだと見る。名古屋大の北野英己名誉教授(農学)は「温暖化の影響で、コシヒカリなどの品種は夏の暑さに負けてしまう」と指摘。高温障害のせいで米粒が白く濁ったり、割れてしまったりする。「名古屋は過去10年ほど温暖化の影響が出ている。米粉用なら、外観が悪くても粉の品質が良ければいい。高温障害を気にせず作れるのは強み」と説く。

一方で、定着はまだ見通せないとの声も。吉田修一さん(76)は1ヘクタールの農地のうち、35アールを自身で耕作し、主食米をつくっている。「農地は1年放置するだけで雑草が生えて使えなくなる。何とか維持したいが、収益を上げなければ続かない」と語る。米粉用米について「製粉の手間がかかる。補助金もずっと続くかは分からない。安定した販路が必要だ」と本音を明かした。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ