液状化被害の国文化財「棚田家住宅」、解体から修復へ
能登半島地震で被災し、公費解体が予定されていた高岡市伏木錦町の国登録有形文化財「棚田家住宅」の主屋が、保存団体の設立により修復されることになりました。この住宅は北前船の船問屋の歴史を伝える貴重な建造物で、建築に詳しい有志らが保存団体を設立し、住宅を購入しました。将来は宿泊や飲食の場としての活用も視野に入れています。
住宅の歴史と特徴
棚田家は代々、北前船の船問屋を営んでいました。1890年(明治23年)に建てられた木造2階建ての主屋(建築面積408平方メートル)は数寄屋造りで、釘を使わずに太い柱と梁を組み合わせる伝統技法「ワクノウチ」が用いられた広間や茶室を備えた豪華な造りが特徴です。
地震被害と解体の危機
高岡市伏木地区は地震で液状化被害に見舞われ、住宅も10センチ以上沈んだり柱が傾いたりして大規模半壊と判定されました。当主の棚田梓さん(82)は市に2024年末までに公費解体を申請していました。伏木地区では同じく国登録有形文化財だった「高岡商工会議所伏木支所」が取り壊されるなど、街の風景は大きく変化していました。
保存への取り組み
こうした状況に対し、「港町の文化が失われる」と考えた人々が住宅の保存に立ち上がりました。富山市の専門学校・職藝学院の上野幸夫教授(69)は建築が専門で、各地の歴史的建造物の修復に関わってきました。上野教授は町づくりに関わる東京のコンサルタント会社経営者・紙田和代さん(65)に協力を依頼し、今年2月、保存を目的に紙田さんを代表とする一般財団法人「北前文化トラスト」を設立しました。建築士らが参加するこの法人が資金を調達し、主屋を買い取りました。
復旧計画と将来の活用
完全な復旧にはさらに約1億円かかる見込みで、国からの補助金も得て、7月から来年1月にかけて地盤改良などの復旧工事を進める計画です。来年度以降は宿泊業者や飲食業者に貸し出して活用することも検討されています。今年4月23日に住宅で開かれた法人の設立総会で、上野教授は「残るべくして『残される』運命を持っていた建物だ。ここを中心に、にぎわいをつくる」と意気込みを語りました。棚田さんは「よい巡り合わせで、奇跡に恵まれた家だ」と感謝の意を表しました。
文化財レスキューと資料の寄贈
棚田家住宅には同家ゆかりの資料や生活道具などが保管されていました。高岡市立博物館は被災建物から歴史資料を守る「文化財レスキュー」に取り組み、昨年4月に棚田梓さんから寄贈を受けました。寄贈されたのは、棚田家が大正から昭和初期に経営していた建築会社の帳簿類やそろばんなどの道具1万点以上で、同館によると会社は富山、石川両県で学校の建設などを手がけていました。建設中や落成後の建物の写真、棚田さんの曽祖父・竹次郎が受け取った学校建設に対する感謝状なども含まれています。同館の仁ヶ竹亮介主幹は「手書きでこの世に一つしかない資料。研究の材料になる可能性もあり、貴重だ」と重要性を強調しました。



