ハンセン病問題を演劇に 「劇団名古屋」13、14日上演…「患者の生きた証し表現」
国によるハンセン病患者の強制隔離政策の実態を描く「劇団名古屋」の「渡る人―星降る島からの報告―」が13、14日、名古屋市で上演される。隔離政策を定めたらい予防法の廃止から30年。代表の谷川伸彦さん(64)は「ハンセン病問題を自分のこととして考えてもらう契機に」と訴える。
隔離の実態を描く物語
「渡る人」は、療養所に隔離され、堕胎の強制など非人間的な扱いを受けた患者16人の戦前、戦中、戦後の生活や、苦しい中でも患者たちが立ち上がって生きがいを見つけ、徐々に人間らしい暮らしを取り戻す様子を描く。フィクションだが、岡山県にある国立療養所「長島愛生園」がモデル。園がある島と本土の距離はわずか30メートルだが、かつては船で渡るしかなく、海峡は隔離の象徴だった。患者たちの悲願の末、1988年に架けられた邑久長島大橋は「人間回復の橋」と呼ばれる。劇では、患者の一人が引き離された故郷に向かおうと、橋を渡ると決める場面も描かれる。
上演への思いと工夫
劇は2022年に市内の稽古場で上演したが、コロナ禍で多くの観客に見てもらえなかった。谷川さんは「劇場で大勢に見てほしいと思っていた」と話す。ストーリーは初演と同じだが、患者の服装を描く時代のものに近づけたり、愛生園の協力を得て、話に合わせて実際の療養所内の写真をスクリーンに映したりして、かつての療養所の様子がより伝わるように工夫する。
劇団の歩みと決意
劇団は10年、現在のあま市出身で隔離政策に反対した医師・小笠原登を描いた劇を上演した。その前に愛生園を訪れた谷川さんは、故郷に帰れないまま園で亡くなった3500人以上の遺骨が眠る納骨堂を見て、これまでいかに自分が無関心だったかを知り、「社会が差別を繰り返さないために演劇人として何かしなければ」と決意。コロナ禍を除きほぼ毎年園を訪れ、県出身の入所者らと交流してきた。
出演者と共に
今年は今回の出演者も誘い、1月と4月に園を訪れた。谷川さんは、患者を演じる16人に、療養所で生きるとはどういうことだったのかを突き詰めてほしいと、演じる人物が療養所に来るまでの経緯や背景の設定を役者本人に考えてもらうことにした。
今も続く課題
強制隔離の根拠だったらい予防法の廃止から4月で30年となったが、今も、偏見を恐れる家族が療養所から遺骨を引き取れなかったり、国が元患者の家族に払う差別被害への補償金を申請できなかったりしている。「コロナ禍でも当初、患者らへの偏見が広がった。ハンセン病問題はまだ終わっていない」という谷川さんは、「故郷に帰れず、誰にも見送られず逝った人たちの生きた証しを、役者の体を借りて表現したい」と意気込んでいる。
名古屋市東区のアマノ芸術創造センター名古屋で13日午後3時、14日午前11時、午後3時から。一般3500円、65歳以上3000円、中高生2000円(当日はいずれも500円増)。問い合わせは谷川さん(090・1725・9772)。
ハンセン病とは
らい菌により末梢神経や皮膚などが侵される感染症。感染力は弱く遺伝もしないが、かつては感染力が強い、遺伝性といった誤解も強かった。国の隔離政策は1996年のらい予防法廃止まで約90年続いた。今も全国の13国立療養所で回復者551人(5月1日時点)が暮らす。



