六兵衞窯「キヨロク」新社長に清水啓史氏 35歳、経営と職人の両輪で伝統革新へ
六兵衞窯「キヨロク」新社長に清水啓史氏 経営と職人の両輪で

六兵衞窯「キヨロク」新社長に清水啓史氏 35歳、経営と職人の両輪で伝統革新へ

京焼・清水焼の窯元「六兵衞窯」は、製造販売を担う株式会社「キヨロク」の社長職を、昨年7月に8代清水六兵衞氏(71)から分離し、次男で陶工の清水啓史氏(35)に交代した。この人事により、当代の六兵衞氏は創作活動に専念できる体制が整い、啓史氏が経営面を支える新たな枠組みが確立された。

兄弟の役割分担で名跡継承と経営を分離

8代六兵衞氏の決断により、将来「清水六兵衞」の名跡は長男で陶芸作家の清水宏章氏(40)が継ぐことになっている。啓史氏はこの兄弟の役割分担について、「経営と作家活動の両立は難しい課題です。兄の宏章は独自のアイデアを形にする才能に優れていますが、私はむしろ決められた形を忠実に再現する職人仕事が性に合っています。そこで、私が職人としての技を磨きながら経営を担当する流れとなりました」と説明する。

啓史氏の経歴はユニークだ。京都工芸繊維大学大学院で応用生物学を専攻し、都市環境と街路樹の関係について研究を深めた。2016年4月には大手インテリア総合メーカーに入社し、営業職として実務経験を積んでいる。

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転機は休日の実家訪問、初めてのろくろ体験

陶芸の世界に足を踏み入れた転機は、ある休日に実家を訪れた際に訪れた。工房に立ち寄り、兄の勧めで生まれて初めてろくろを回した瞬間、「本当に面白かった。衝撃的でした」と振り返る。この体験をきっかけに、インテリアメーカーを退社し、2019年春から1年間、京都府の陶工訓練校で基礎技術を学び、六兵衞窯での職人としての道を歩み始めた。

社長としての二つの目標:ブランド普及と新代表作創出

新社長として掲げる目標は二つある。一つは、兄の宏章氏が昨年立ち上げた平皿を中心とした食器ブランド「六青」を料理店で普及させることだ。六兵衞窯は従来、贈答用商品が主力だったが、観光客に依存するビジネスモデルはコロナ禍のような「非常時」に脆弱であることを実感。料亭や日本料理店との取引を拡大し、安定した受注基盤の構築を目指す。

もう一つの目標は、六兵衞窯の新たな代表作を世に送り出すこと。現在、明治から昭和初めに活躍した京都出身の画家・図案家、神坂雪佳の子犬の絵を原案にした器が高い人気を博している。「犬のかわいらしさが六兵衞窯らしいと評価されるのはありがたいですが、それを超える作品を手がけたい」と意気込む。

江戸後期から続く伝統、現代に適応する経営改革

六兵衞窯の歴史は江戸後期の1771年、初代清水六兵衞が五条坂に窯を開いたことに始まる。歴代当主が個性豊かな作品を生み出し、6代目が1948年に前身の株式会社を設立。1986年に現在の「キヨロク」に社名変更し、今も五条坂に拠点を置き続けている。

啓史氏は、「六兵衞」の名跡と二人三脚で歩みながら、社長としての道を模索する。生物学の知識と営業経験、職人としての技術を融合させ、伝統工芸の新たな可能性を切り開く役割を担う。

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