高木美帆、銅メダル獲得の裏に「突貫工事」のブレード選択と滑りの進化
2026年2月16日、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのスピードスケート女子500メートルで、高木美帆選手(TOKIOインカラミ)が銅メダルを獲得した。これは1000メートルに続く2つ目の銅メダルとなり、ゴール後、観客席に手を振る姿が印象的だった。
高木選手は試合後にしみじみと語った。「やっぱりこのブレードには、すごく感謝の気持ちが強い」。足元から自身を支え、ともに戦ってくれるスケートの刃に対する深い思いがにじむ言葉だった。
ブレードの変遷と新たな挑戦
現在使用しているブレードは、2018年平昌、2022年北京の両五輪で使ったものだ。しかし、ミラノ五輪への道のりでは、別の可能性を模索した時期もあった。
2023年、高木選手は新たな挑戦を始めた。海外の中・長距離選手の大半が使用するタイプにブレードを切り替えたのだ。マンネリ化していた滑りを見直し、違った刺激を受けることで、滑りをバージョンアップさせる狙いがあった。
このチャレンジは当初、うまくいったかに思えた。2023~2024年シーズンのワールドカップでは自己最多の年間9勝を挙げ、翌2024~2025年シーズンも7勝を積み増した。
変調の兆しと決断の時
しかし、その滑りに変調が見え始める。顕著だったのは終盤の失速で、特に2025年3月の世界距離別選手権1500メートルで喫した敗戦(4位)のショックは大きかった。
新ブレードは、肉体的な力強さが速さにつながるイメージだった。そのためパワーをつけるトレーニングを積んだが、それが効率良くスピードを出す持ち前の繊細な滑りを失わせる要因にもなった。
決断を下したのは今シーズンの開幕直前。過去のブレードに戻し、「突貫工事」で現在の体に合った滑りを手に入れようともがいてきたのである。
会心の滑りと技術の進化
15日の500メートルは、銀メダルを獲得した北京五輪をほうふつとさせる会心の滑りだった。当時出した自己記録(37秒12)には届かなかったが、最初の100メートルは10秒40という自己最速のスピードを実現した。
高木選手は収穫の大きさを語った。「技術の部分でつかみ始めているものがある。500メートルに挑むにあたって動きの修正に取り組み、結果としていい動きにつながった」。
悲願の1500メートル制覇へ向けて
慣れ親しんだブレードと追い求めてきた理想の滑り。高木美帆選手は、悲願の五輪1500メートル制覇に向け、その完成形にまた一歩近づいた。試行錯誤を重ねた31歳のアスリートが、銅メダルの輝きの先に見据えるのは、さらなる頂点への挑戦である。