南海トラフ地震、公的備蓄だけでは不十分 高知大・原教授が指摘
南海トラフ地震、公的備蓄だけでは不十分 高知大教授

高知県が3月末に公表した南海トラフ地震の新たな被害想定について、検討委員会で副委員長を務めた高知大学の原忠教授が、その意義と備えの重要性を語った。最大規模の地震が発生した場合、建物倒壊や津波による死者は約2万3000人に上るとされ、厳しい数字が示されている。

前回想定からの進化

2013年の前回想定は、最大クラスの地震や津波による被害の把握と命を守る対策に主眼が置かれていた。これにより津波避難タワーの整備や堤防の耐震化、液状化対策などのハード面が進んだ。しかし、それらが完成したことで新たな課題が浮かび上がり、今回は復興段階までを見据えた点に意義があると原教授は指摘する。

発災直後の過酷な現実

最大クラスの地震が起きれば、揺れが3分以上続く場所もあり、沿岸部では10分以内に津波の第1波が到達する。直後からがれきで道路が塞がれ、火災や液状化が発生し、迅速な避難が困難になる。高台に逃げても周囲の水が引かなければ身動きが取れない。電気や水道などのライフラインは停止し、ガソリンなどの燃料も枯渇。物流が途絶えるため物資は届かず、公的な備蓄だけでは食料や水が大幅に不足する。厳しい状況の中で生活を再建しなければならず、命が助かっても多くの困難が待ち受ける。

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震災関連死の教訓

2016年の熊本地震や2024年の能登半島地震では、震災関連死が直接死を上回った。関連死に関する知見は少ないものの、過去の災害を基に1300~2600人と想定。この深刻な数字を示すことで、対策の重要性を訴えている。

避難所の見直しと事前準備

関連死を防ぐには、避難所のあり方を見直す必要がある。学校などの避難所は短期滞在が原則であり、早期に仮設住宅を建設して移り住むことが重要だ。建設資材の不足が予想されるため、事前に資機材を確保し、建設用地の見通しを立てておく準備が欠かせない。

自助努力の重要性

今回、震度7の想定地域が拡大したことで建物倒壊による死者・負傷者が増加したが、現在89%の住宅耐震化率が100%になれば確実に減少する。津波からの早期避難率が向上すれば、犠牲者はさらに減る。被害軽減には県民一人ひとりの「自助」が大きく寄与する。原教授は「地震が起きたとき、備え以上のことはできない。大変だと言っているだけではだめだ。被害想定は危機をあおるものではなく、過去の事実と科学的知見に基づいて伝えている。数字を冷静に読み解き、行動に移してほしい」と訴えている。

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