流通経済大学付属柏中学校・高等学校(千葉県柏市)で2025年4月、堀江健二氏が新校長に就任した。就任2年目の2026年度は、2023年度に創設された中学の1期生が高校生となる節目の年である。「体験教育」「グローバル教育」を軸にした学びによって、自ら考え行動する力が伸びているのを実感するという堀江校長に、教育方針や今後の展望について聞いた。
失敗恐れず自分の好きなものを見つける6年間
「生徒には、失敗を恐れず、いろいろな体験をしてほしい」と語る堀江校長。堀江校長は東邦大学を卒業後、流経大柏の専任教諭となり、理科の授業やテニス部顧問を担当。進路指導部長、教頭、副校長を経て2025年度から現職。千葉県高体連テニス専門部ブロック長、千葉県私学吹奏楽運営委員会事務局長なども務めた。
――40年以上、同校の教育に携わる中で、どのような活動が記憶に残っていますか。
授業だけでなく、部活動や課外活動など、さまざまな場面で楽しく生徒と関わってきました。今は無理ですが、以前は家庭科教室を借り切って生徒と一緒に調理したり、流しそうめんをしたり、餅つき大会をやったり、いろんなことにチャレンジしてきました。理科の授業では、生物の学習行動を学ぶ単元で、マウスが試行錯誤しながらゴールを目指す迷路のような実験装置をつくり、記憶について考察したこともありました。また、保護者の許可を得て、生徒と実験室に泊まり、ウニを受精卵から幼生へと変態させる実験をしたのも良い思い出です。この発生実験は、私自身も高校生の時に学校に泊まって体験していて、とても衝撃を受けたものでした。
――生徒には、どんな人間に育ってほしいですか。
人間関係においても、学びにおいても、壁をつくらず、好奇心や興味関心を持って、さまざまなことを吸収してほしいですね。そのうえで、自分にとって大切なもの、自分には適さないものを判断し、行動できる人間になってほしいと願っています。また、本校での6年間を通して、「自分の大好きなものはこれだ」というものを見つけてほしいです。好きなものは心の支えになり、自分を強くしてくれます。そのためにも、中学では好き嫌いに関係なく、また、失敗を恐れず、いろいろな体験をしてほしいのです。失敗したら、どうしてうまくいかなかったのかを考えることも重要なことです。
生徒がじっくりと考え、選択するチャンスをつくる
――校長として、新たに取り組みたいことはありますか。
現段階では、新しく何かを始めるのではなく、今あるものを大切にしていきたいです。2023年度の中学創設時から、体験教育とグローバル教育を軸に据えたカリキュラムを進めていますが、1期生の中高6年間を見届けたうえで、改善点などを考えていくつもりです。中学では、全学年が学期ごとに1回、年3回の校外学習を行っており、私はまだ、そのすべてを回り切れていません。今年度も引き続き、学内外で生徒の様子を見ていこうと思っています。新たに2026年度は、高校に「中高一貫コース」が新設されますが、体験を重視しつつ、「特別進学コース」のカリキュラムに近づけ、学習面でのステップを上げていきます。生徒の将来を見据えた取り組みを進めるには学力も大切な要素の一つですから。
――生徒と接するとき、心がけていることを教えてください。
中学の3年間は、肉体的にも精神的にも変化が大きく、成長する時期です。人格形成において、私たち教員の責任は大きい。どう導き、どうサポートしていくのかを慎重に考え、十分に準備しておくことが重要ですが、教員が考えて準備したことをすべて行って生徒に手をかけ過ぎるのは良くない。私はテニス部の顧問だったとき、朝練に始まり、昼休みのミーティング、放課後の練習、ときには夜の練習と、考えて準備したことをすべて行っていた時期がありました。しかし、今思うと、生徒の選択肢を狭めていたと感じます。現在は、生徒から質問をされても、すぐ答えを教えるのではなく、逆に質問を返すなどして、生徒がじっくり考え、自分で選択するチャンスをつくるよう心がけています。これは、中高6年間という時間のゆとりがあるからこそ、できることだと思います。
培われた英語力が発揮された海外修学旅行
――中学創設について、現段階での手応えを教えてください。
2月に中学1期生の集大成となる「シンガポール・マレーシア修学旅行」を引率しましたが、自分たちで考えて行動する生徒たちの姿が見られました。班行動では、電車に飛び乗ろうとする活動的なメンバーを、別の慎重派のメンバーが引き留める場面もありました。それぞれの個性がバランスを取りながら活動できており、成長を感じました。これは、校外学習などで多様な人々と関わり、さまざまな学びを経験してきた結果だと思います。週6時間の英語授業やオンライン英会話で、英語力が培われていることも大きい。中1では外国人留学生に浅草付近を案内する活動がありますが、事前に調べ、資料を英語でつくって「万全の態勢」で臨んでも、当日は必ず想定外のことが起き、それでも完遂することが求められます。こうした経験の積み重ねがあって、海外修学旅行でもものおじせずに行動できたのだと思います。
――部活動も生徒の成長の場になっていますね。
中学生は、高校生に引っ張られて刺激を受けているようです。サッカー部が全国大会に出場した際には、ほぼすべての中高生が国立競技場に集い、観客席をスクールカラーの赤一色に染めて応援できました。また、吹奏楽部やチアリーディング部が地元の祭りに招かれるなど、地域交流も盛んです。本校のある「柏の葉エリア」には東京大学や千葉大学、国立がん研究センターなどがあり、3月には知的交流イベントの場で、科学部員がポスター発表を行いました。このように、校外学習や部活動など、さまざまな場所で学外の多様な人々と関わり、ときには失敗し恥をかきながら、生徒は成長していきます。今後は地域や学外の人々を校内に招くなどして活動を広げていきたいですね。
――どのような生徒に入学してほしいですか。
好奇心が強く、自分探しをしたいという生徒に集まってほしいですね。本校では、校外学習だけでなく、授業でもふんだんに体験の場を設け、チャレンジの機会を用意しています。多くの挑戦を通して、「自分は何が好きで、これから何に興味関心を持つんだろう」「自分の長所・短所は何だろう」といったことを、中高6年間で見つけてほしいと願っています。夏から始まる学校説明会では、生徒が受け付けや進行を担当します。生徒が来場者の質問に台本なしで答えるコーナーなどもあります。まずは学校に足を運び、生徒たちの生き生きとした姿を実際に見ていただきたいですね。



